[原子力産業新聞] 2008年7月10日 第2436号 <2面> |
賠償額の増額を合意 文科省 原賠法改正の検討進む文部科学省の原子力損害賠償制度の在り方に関する検討会(座長=野村豊弘・学習院大学教授)は4日、第3回会合を開催、今回の原子力損害の賠償に関する法律(原賠法)改正の論点となる損害賠償措置額、法律適用期限の延長、罰則規定、損害賠償紛争審査会の活用などを審議した。損害賠償措置額は、現行の600億円から改正パリ条約の水準を念頭に、1,000〜1,200億円程度に引上げる方向で合意した。 賠償措置額は、1961年の原賠法制定時の50億円から60億円・100億円・300億円・600億円と、国際水準や責任保険の引受能力などを反映し設定してきている。 現在の国際水準は、改正パリ条約の下限7億ユーロ(約1,100億円)、改正ウィーン条約の下限3億SDR(約500億円)、CSC条約(原子力損害の補完的補償に関する条約)の下限3億SDRなど。CSCは責任額に、各国の拠出金も上乗せする。我が国が国際条約加入の場合、CSC条約を念頭としている。 文科省は今会合で、改正パリ条約を指標に1,000〜1,200億円程度に引上げるオプションと、CSC条約が求める額をすでに充足済みであり現水準を維持するオプションを提示。各委員から原子力先進国として適切な額、事業者負担などに関する意見が出されたが、1,000〜1,200億円程度に引上げる方向とし、今後詳細を詰める。これに合わせ、小額賠償措置額(特例額)も同率程度で引上げる方針。 法律の適用期限では従来同様に10年の延長とすること、罰則規定では最近の原子炉等規制法の改正を踏まえ、その水準を引き上げる方向で合意した。また原子力損害賠償紛争が生じた場合の和解仲介を行うため、文科省に設置される機関である原子力損害賠償紛争審査会は、JCO事故の経験を踏まえ、個別の和解仲介だけでなく、損害全体の把握や賠償の基本的な考え方の調査審議も行うこととする。 |