[原子力産業新聞] 2008年7月24日 第2438号 <1面>

30年後、原型炉の運転開始を 建設費は1兆円 核融合エネフォーラムが提言

大学、研究機関、産業界などの研究者・技術者や各界の有識者などが参加する核融合エネルギーフォーラムのITER・BA技術推進委員会のロードマップ等検討WG(座長=岡野邦彦・電力中央研究所上席研究員)はこのほど、文部科学省から要請を受けて検討してきた「核融合エネルギー実用化に向けたロードマップと技術戦略」をまとめた。トカマクを前提に、遅くとも2030年代後半に原型炉の運転を開始、10年間程度発電実証し、50年代に最初の実用炉投入を目指す。原型炉建設に必要な1,000件を超える技術マップも作成、同建設費用は周辺施設なども含め、約1兆円としている。

文科省の検討要請は昨年10月。WGは同11月から、(1)21世紀中葉までに核融合エネルギーの実用化の目途を得るためのロードマップ(2)産業界を含めた日本の技術戦略・枠組み・役割分担(3)人材育成や確保の分析・計画――などを検討してきた。

原型炉建設に必要な技術マップはトカマク本体、ブランケット、トカマク周辺機器、流体制御、メンテナンス、プラズマ、加熱電流駆動、計装制御、トリチウム、バックエンド技術開発、電源制御、発電システムなど18分野・1,000項目以上から成る。

特にBA(幅広いアプローチ)と並行して我が国が独自に、早期に原型炉用として開発に着手すべきとしてブランケット、SC(中心ソレノイド)コイル、ダイバータ、リチウム6の濃縮・量産技術、冷却系のトリチウム管理技術、メンテナンス手法、規格基準、環境安全性評価手法、JT−60を利用した実験研究など9項目を挙げた。

日本の技術戦略では必要技術を国内保持、国際協力、海外導入などに分類し、技術選択が必要なものはその決断時期も示した。また原型炉建設の際の役割分担では、ITERおよびBAの成果を継承し、全体の基本設計を行う実施機関とともに、構造仕様を作成し、実用炉建設会社の母体にもなる総合調整会社の設立を提案している。

原型炉建設のプロジェクト規模は核融合熱出力3GW程度、電気出力1GW程度を想定し、本体が約7,700億円、周辺施設・管理費用など約2,300億円と見積った。

人材計画では原型炉の建設を判断する時期と想定される15年程度の期間を対象に、必要となる研究開発事項をもとに検討。確保すべき人材数は、約400名弱と現状に対し約200名増で、これを実現するには毎年25名程度の採用が必要という。国内の人材育成を通じて、ITERに採用されるような優秀な候補者を多く出せる仕組みが重要と提起している。


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