[原子力産業新聞] 2008年7月24日 第2438号 <3面>

仏でウラン含有液が環境に流出 トリカスタン施設

7日から8日にかけて、仏アレバ社の子会社であるSOCATRI社が操業するウラン含有溶液処理施設(STEU)からウラン含有溶液が環境に漏れる事象が発生したが、従業員および近隣住民の健康に影響がなかったことから、仏原子力安全局(ASN)は17日、同事象を国際原子力機関(IAEA)の原子力事象評価尺度で暫定的にレベル1に分類した。

STEUはトリカスタン原子力施設内にあるジョルジュ・ベス濃縮工場の溶液処理設備で、漏れは7日の22時以降の排水作業中に発生したと見られている。貯蔵タンク下部に設置された漏洩水保持タンクに溶液が溜まり始め、数時間のうちに監視システムが保持タンク外に溶液が流れ出たことを検知。SOCATRI社は直ちに操業を停止し、さらなる流出を止める措置を取った。同社はまた、付近の土壌とガフィエール川のサンプル調査を実施しており、安全当局と地元ドローム県に連絡したのは8日の午前7時過ぎだった。

10日にはASNおよび原子力安全防護研究所(IRSN)の検査官が現地入りし、STEUを厳重に調査。ガフィエール川への溶液流入が止まっていることを確認した。アレバ社によると、環境中に漏れた溶液は約30立方メートルで、1リットルに付き12gの天然ウランが含有されていたが、数日のうちに濃度は通常レベルに戻ったとしている。SOCATRI社も、IRSNのモニタリングにより、世界保健機構の定める飲料水用の放射線基準を下回ったと述べた。

しかし、ASNは17日の発表で、「ほとんどすべての計測地点で土壌や地下水の濃度は通常レベルに戻ったと考えられる」としながらも、2か所の計測値が基準を上回っていた点を指摘しており、ヴォークリューズ県では引き続き灌漑および飲料目的の使用を制限する考え。トリカスタン地元情報委員会もこの計測結果に関する公聴会を9月に開催する予定だ。

ASNとしては、原因は事故当時、近代化作業中だった漏洩水保持タンクの密閉機能に不具合が生じていたためと断定。アレバ社も、作業チームと操業チームの連携不足が事故発生の一因になったとしている。また、SOCATRI社が事故の処置に追われて、ASNへの連絡が3時間近く遅れたことも過失だったと指摘している。


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