[原子力産業新聞] 2008年8月7日 第2440号 <3面> |
サイクル施設は放棄 UAEの原子力開発利用方針アラブ首長国連邦(UAE)政府は今年4月、同連邦における原子力エネルギー平和利用に関する評価結果と可能性のある開発方針を公表している。「原子力はUAEの経済と将来のエネルギー保障にとって重要な貢献が可能な選択肢」と位置づけるとともに、濃縮や再処理など燃料サイクル関連施設を建設する意志はないと明記するなど、原子力開発利用の実現に向けて具体的な計画が進展しつつあることを明らかにした。 冒頭の背景説明で、UAEは連邦内の年間ピーク電力需要が2020年までに4000万kWを超えると予測されている点に言及。様々なエネルギー源を評価した結果、技術が実証済みで環境に優しく商業的にも競争力のある選択肢として原子力が浮上してきたと説明しており、重要なベースロード電源としてUAEの経済および将来のエネルギー供給保障に貢献できると判断したとしている。 このような分析に基づき、UAEでは国際原子力機関(IAEA)の勧告に従って原子力エネルギー計画実施機関の設置を決め、UAE国民がその恩恵を享受できるような原子力平和利用プログラムの策定評価作業を進めている。その中で、UAE政府として正式に決定した開発方針は次の6点に集約されたとしている。すなわち、(1)完全に透明性のある事業展開(2)核不拡散のための最高基準を遵守(3)安全確保のために最も厳しい基準を遵守(4)IAEAと直接協働し、平和利用プログラム策定評価のための基準を遵守(5)平和利用施設開発において信頼のおける外国政府、企業、および専門家機関と連携(6)長期的な持続可能性を保障できるような平和利用プログラムの策定――だ。 (1)について、UAEは「首長国原子力会社(ENEC)」を立ち上げることとし、初期資金として3億7500万AED(約1億ドル)を供給することになった。必要とされる国際協定はすべて受け入れるとしており、すでに締約済みの国際協定に加えて、保障措置協定・追加議定書や供給国グループのガイドラインなどを受け入れる計画を明らかにしている。 (2)の中では特に、連邦内において燃料サイクル関連施設を建設する意志を放棄すると明記しており、信頼できる国の政府や企業から原子燃料が長期的に安全、確実に輸送・提供されるよう協定を結びたいと明言。使用済み燃料の処分などについても可能な限り同様の扱いで進めたいとしている。 (3)の関連では、第3世代の改良型軽水炉が安全確保の点で技術的に優れているとしており、この種の炉を優秀な運転員が厳しい基準に則って運転するよう徹底したいとの考えを示した。 UAEはかねてより石油依存国家からの脱却を目指した経済政策を模索しており、2006年12月の湾岸協力会議(GCC)では他の加盟5か国と協同で原子力開発平和利用計画策定のための調査を実施すると発表していた。07年2月にGCC6か国は実行可能性調査の実施協力についてIAEAと合意。今年1月には仏国のアレバ社、トタール社、およびスエズ社が、アブダビでEPR2基を建設する計画をUAEに提案するため協力協定を結んでいる。 UAEの国家メディア評議会が後援する報道サイトによると、UAE側も4月〜5月にかけて、米国、英国および仏国の各政府と相次いで原子力平和利用協力のための了解覚書等に署名。6月には、2900億AED(約789億ドル)でUAE内に14基の原子炉を設計・建設するため、可能性のあるメーカー9社を事前資格協議に招待したと伝えている。 |