[原子力産業新聞] 2008年9月4日 第2443号 <2面> |
第一壁の実証試験に成功 原子力機構が世界初 ITER向け 各極が開発に全力原子力機構は8月28日、国際熱核融合実験炉(ITER)開発に向けて研究開発を行なってきた試験用ブランケット第一壁の実規模モデルの製作と性能実証試験に世界で初めて成功した、と発表した。 核融合炉の最重要機器の1つであるブランケットは、炉心プラズマを取り囲み、核融合で発生する中性子を遮蔽、熱の取り出し、燃料となるトリチウムの増殖が機能で、ITER建設の中でもまだ概念や仕様が決まっていない各極が開発のしのぎを削っている部分。 ブランケットの一部を構成する第一壁は、プラズマに直面する部分で、ITERでの表面温度は500〜600℃に達し、プラズマが発する高い熱や中性子に耐える構造とする必要がある。耐熱性の高い低放射化フェライト鋼の薄板と水を通す冷却管から構成され、表面をプラズマ粒子から保護するため、ベリリウムの保護材を接合している。 第一壁は多数の構造体からなる複雑で大きな構造のため、従来の溶融型の接合手法では残留ひずみによる溶接変形が著しく、十分な製作精度が得られないため、熱間等方圧加圧接合(HIP)法を世界で初めて低放射化フェライト鋼製の大型構造物に適用し、良好な成績を上げたもの。 今回の第一壁実規模モデルの大きさは、厚さ2.5cm、幅16.5cm、長さ149.5cm、高さ60cmで、板状のコの字型をしたもの。 実際のブランケットでは、コの字型の部分にトリチウム増殖材のリチウム化合物、中性子増倍材のベリリウムなどの微小球を充填する充填層を組み込み、微小球のリチウム化合物を回収して核融合で生まれたトリチウムを分離し、核融合の燃料として供給する。ITERのブランケット数は400〜500個必要となる。 |