[原子力産業新聞] 2008年9月4日 第2443号 <2面>

RI国内安定供給を 学術会議が提言 加速器活用も

日本学術会議の「放射線・放射能の利用に伴う課題検討分科会」(委員長=柴田徳思・日本原子力研究開発機構J―PARCセンター特別研究員)は、放射性同位元素(RI)の安定供給に関する提言をまとめた。主に医療分野におけるRI製造・供給体制の新展開、利用の合理的推進を求めるもの。

日本のRI供給上の課題は、非密封RIのほとんどを輸入に頼っている現状と、品質管理面や、特に体内診断用放射性医薬品の核種では半減期が短いことから、在庫販売ができず、安定供給面でも支障となっている。核医学診断の主力であるMo99はカナダが大きなシェアを占めるが、近年、製造を行う原子炉トラブルの増加や後続炉の頓挫から、世界の医療界に影響を及ぼしている。一方、国内でRIを製造する原子炉は、原子力機構のJRR―3とJRR―4があるが、中性子ビーム利用研究が主となっており、安定なRI供給体制とはなっていない。

これらの課題から、提言では、RI安定供給の安全保障として、現在改修が進められている原子力機構のJMTR原子炉でのRI製造復帰を「喫緊かつ最も重要」ととらえ、その着実な推進を訴えている。JMTRの改修計画では、11年度からの利用に備え、機器の更新期間中にも照射設備を整備する予定だ。

また、放射性医薬品の承認審査では、日数を要する現在の審査基準を見直し、その特殊性を勘案し、一般の医薬品とは異なる合理的な基準を導入することを求めている。

今後のRI製造の新展開に向けては、保守による中断が避けられぬ原子炉のバックアップとしても、J―PARC等の先端的加速器活用のほか、研究機関での人材育成を図ることなどを提言している。


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