[原子力産業新聞] 2008年9月11日 第2444号 <4面>

「超コンパクトな」加速器 三菱電機 手のひら大ながらも990keV

三菱電機はこのほど外径15cm、重さ10kgと手のひら程度の超コンパクトな電子加速器「ラップトップ加速器」(=写真)を開発した。990keVの電子ビームにより、発生点径10μmのX線の発生が可能で、非破壊検査や診断用装置への利用を進める方針。

非破壊検査には、一般にX線エネルギーが300keV程度のX線管球が使用されるが、厚い物体への対応に課題がある。一方、加速した電子ビームをターゲットに衝突させてX線を発生させる加速器型は、高エネルギーのX線の発生が可能だが、装置が1m以上と大型化する課題がある。

「ラップトップ加速器」は、電子銃から発した電子をドーナツ状の真空ダクト内で幅広の電子ビームとして加速する独自の加速手法と、電子ビームを加速しながら所定の領域内に収束させる電磁石の開発により、990keVまでの加速を手のひらサイズで実現した。

従来は大きなターゲットに電子ビームを衝突させていたため、X線の発生点径が100μm程度だったが、今回、針状のターゲットにビームを次々に衝突させるビーム制御技術を開発し、発生点径を10μmとしたことも大きな特徴。これによりX線屈折率の差で生じるわずかな屈折を利用し、物質境界が鮮明に見える屈折撮像を可能にした。

同社では、装置製造メーカーに新加速器を提案するとともに、より大出力化や高信頼化などを進め実用化を目指す。


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