[原子力産業新聞] 2008年9月18日 第2445号 <4面>

産総研 陽電子で極微欠陥を画像化 先端材料開発で利用推進へ

産業技術総合研究所はこのほど、陽電子ビームを用いて原子サイズレベルの極微欠陥や空隙分布を短時間で3次元イメージングする手法を開発した。極微欠陥の制御が必要な半導体デバイスなどの先端材料開発分野での利用を進める。

この技術は、電子リニアックを用いて発生した高強度の短パルス化陽電子ビームを30μm以下に集束、ビーム照準を3次元的に制御して試料に照射、この時の陽電子・ポジトロニウム寿命や散乱粒子などを測定し、試料の欠陥や空隙を画像化するもの。陽電子や陽電子と電子がペアを組み互いに束縛された状態であるポジトロニウムの寿命は、極微欠陥の有無や空隙サイズなどで変化するため、この寿命を測定することにより欠陥や空隙を評価できる。

高分解能の電子顕微鏡でもこうした欠陥や空隙の測定は難しく、陽電子ビーム利用技術が開発されてきたが、これまでビーム源を放射性同位元素としていたため、ビーム強度などの課題から測定時間が長く、実用レベルではなかった。

今回、産総研では独自に磁場輸送ビームにより直径1mm程度に集束する技術、陽電子減速材を通して指向性を改善する技術、加速部で加速エネルギーを調整する技術などの開発により、1画素あたりの測定時間2秒を実現した。

同手法は、他の計測技術では測定が困難な非晶質材料や高分子材料などでの極微欠陥や空隙のイメージングも可能で、様々な先端材料開発のツールになるという。

今回の成果は、文科省の原子力試験研究費課題や科学技術振興機構の先端計測分析技術・機器開発事業で得られた。


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