[原子力産業新聞] 2008年9月18日 第2445号 <4面>

【書評】「放射線防護、監査と原子力安全保障のフランスの制度」 ジャン・イヴ・ル・デオ 著

ロレーヌ地方議会副議長で、ムルト・エ・モゼル県選出下院議員でもある著者が、1998年3月に当時のジョスパン首相の求めに応じて、フランス中央政府機関や地方公共機関、研究開発機関が、原子力安全や放射線防護にどういう役割を担い、それらの調整はどうあるべきかを調査し、同年12月に刊行した報告書の翻訳である。

これは10年の時間を経ているが、軍事利用と民生利用が絡み合って発展してきたフランスの原子力関係の法律や政府機関の複雑さと、どういう選択肢の中で整理・統合がどうなされたかを理解する上で絶好の解説書である。原子力安全防護研究所(IPSN)の原子力庁(CEA)からの分離等もこの報告書で勧告された。

報告書の目的からは当然のことながら、フランス国内でどういう事故があり、地域住民、中央・地方政府がどう考え、どう対応したかの実例も豊富である。

原子力安全や放射線防護に関わる法令・機関の詳細な説明や組織図、施設所在地マップ、機関略号集は、フランスと原子力や放射線に関連する研究・ビジネスに従事する者には必携といえる。欧米6か国との原子力安全や放射線防護の体制や考え方に関する調査部分も自他の比較の仕方が興味深い。

訳者の松永史子氏はソルボンヌ美術史修士で、産婦人科病院の経営経験もあるユニークな経歴の持ち主である。惜しむらくは、扱う分野のむずかしさもあるが、訳語が固い。

現代書林刊、1500円(税別)、46判、223頁。


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