[原子力産業新聞] 2008年9月25日 第2446号 <4面>

発電分野でのCO削減重要 茅陽一氏が温暖化対策で 原子力懇話会

原産協会の原子力システム研究懇話会(代表=近藤次郎・東大名誉教授)は18日、都内でシンポジウム「原子力と地球環境」を開催した。茅陽一・地球環境産業技術研究機構副理事長が「地球温暖化への世界と日本の対応」と題して講演し、意見交換を行った(=写真)。

茅氏は、EUが提案している「2度上昇安定化提案」(産業革命から現在までに0.5℃すでに上昇しているので、今後は1.5℃)がいかに難しいかを説明し、現在のCO排出量を10分の1以下にしなければならないなどと指摘した。加えて、2060年以降にはCO地下貯留(CCS)などの導入シナリオが必要となる可能性もあると述べた。

さらに、同氏は6月に発表された福田ビジョンの、2050年までにCO排出量を全世界で半減するという目標について、現在は排出量の半分を地球が吸収していることから、排出量を半減させれば、そこで地球温度が安定化すると期待した可能性があるが、排出量が減少すれば地球の吸収量も減少するので、そうはならないなどと警告した。

また、日本のCO排出量は、発電4割、鉄鋼1割、運輸2割、民生1.5割、その他産業(発電以外はすべて非電力需要からのCO排出)となっており、発電での排出削減は大きな意味を持つと述べた。

風力発電については、仮に1500基あったとして、その発電量を平均してもかなりの出力変動をもたらすため、この影響をLNG火力発電では補いきれず、外部コストとして、15〜30円/kWhもの大規模なバッテリーコストも考慮しなければならないなどと試算した。

続いて、「地球温暖化に係るIPCC報告と原子力」と題して講演した出澤正人・新潟大学特任教授は、IPCC第4次評価報告書に盛り込まれたさまざまな分野での地球温度上昇現象について説明し、スペインでは、既存の水力発電量が2070年までに25%以上減少する見通しが出ていることなど、水資源への影響を指摘した。同氏は温暖化懐疑論にも触れながら、12か国23モデルの成果がIPCCの結論には反映されていると述べた。

原子力発電については05年で、主要国の一次エネルギー全体の6%を占め、国別ではフランスが39%、韓国が15%、日本が13%、韓国が11%などと紹介。今後のの見通しについては、2050年に世界で14億kWを確保するためには、世界中でかなりのペースで建設していかなければならないが、1980年代にも同様の最大傾向での建設経験を有していることから、不可能なことではない、と指摘した。


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