[原子力産業新聞] 2008年10月2日 第2447号 <2面>

ミュオンビーム生成 J―PARCで成功

J―PARCセンターは9月26日、物質・生命科学実験施設(MLF)でミュオンビームの生成に成功(=写真)した。来年4月から本格利用の予定で、今年5月の中性子ビーム発生に続く成功となった。

ミュオンは中間子が崩壊してできる素粒子で、電子と同じレプトン(軽粒子)の仲間。負の電荷を持つミュオンは電子とほぼ同じ性質、正の電荷を持つミュオンは物質中において水素の原子核の同位体のように振舞う。質量は電子の約200倍で陽子の約9分の1。

J―PARCでは、光速に近い陽子ビームを黒鉛のターゲットに入射、中間子を造り、ミュオンビームの生成に成功した。

MLFで造るミュオンはエネルギーが揃った正の電荷を持つミュオンビーム。ターゲットの表面で発生したミュオンはビームラインを通し、様々な実験エリアに輸送されるが、今回、輸送に成功したのは「崩壊ミュオンビームライン」というライン。同ラインは超伝導ソレノイドを用い、様々なエネルギーのミュオンを発生源から実験エリアまで輸送できる。

電荷を持ち、磁気的性質を敏感に捉えるミュオンは、物質のナノスケールでの磁気構造や機能解析に利用されるとともに、物質中に含まれる水素の状態や動きを解明するための有力な手段。

これまで高エネ機構のミュオン科学研究施設が利用研究を進めてきたが、J―PARCは同施設の2桁以上の強度を持つビームを発生、より広い分野での利用展開が期待される。


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