[原子力産業新聞] 2008年10月9日 第2448号 <1面>

米議会 対印協力協定承認 原子力協力新時代へ 仏も協力協定に署名、積極参入

G.ブッシュ大統領は8日、米国とインドの原子力平和利用協力協定を承認するための法案(HR7081号)に署名し、米印原子力協力協定は10日にも発効の運びとなった。米議会上院は1日の本会議で同法案を86対13の大差で可決、下院も9月27日に3分の2以上の賛成で承認していた。一方、仏印も9月30日、原子力協力協定に署名し、ロシアを交えた対印原子力協力は一段と国際的に多角化することになる。(3面に仏印原子力協定署名の記事)

1974年のインドによる核実験を契機に、米国は原子力輸出を規制する原子力供給国グループ(NSG)の設立を働きかけ、核不拡散条約(NPT)に未加盟で国際原子力機関(IAEA)の包括的保障措置を受け入れないインドへの禁輸を実施。しかし30余年を経て、米国はインドへの原子力機器や核燃料の輸出を可能にする協定の締結によって禁輸措置を解除し、同国との関係修復、双方の経済成長を促す戦略的パートナーシップの構築に踏み出した。

2005年7月にブッシュ米大統領とインドのシン首相の共同声明で提唱された米印原子力協力協定は、06年に成立した「ヘンリー・ハイド米印原子力平和利用協力法」によって、米国の原子力法・第123条に明記されている「相手国の包括的な保障措置受け入れと遵守」の適用から除外した。ハイド法ではこのほか、同協定締結の条件としてNSGがインドを例外扱いとし、規制品目の輸出規制を解除することなどを提示。これは9月6日のNSG臨時総会で承認されるなど、米国側の課題点が徐々にクリアされていく一方で、インド側ではシン首相の連立与党内での対立が生じるなど、協定成立への条件整備は難航した。

最後のハードルとなった米議会の承認では、「原子力協力協定の承認、および原子力平和利用に関わる米国核不拡散法の強化」を主題とするHR7081号法案が審議された。同法案は、(1)「ブッシュ大統領が約束した燃料の供給保障は政治的なものであり法的拘束力を持たない」などとする捉え方を含めて、同協定は米国の条項解釈に基づいて承認される。(2)米国は米国以外のNSG加盟国およびその他の国がインドに原子力機器、材料、技術などを移転しないよう努める。さらに本法案は、同協定の承認がインドによる核兵器の生産を支援・助長することはないというNPT上の米国の義務と一致している点を検証するよう大統領に要請する(3)米国議会はインドが早急にIAEAの追加議定書に署名・遵守するよう促す(4)本法案は、インドが保障措置の適用を受ける民生用原子力施設のリストを早急にIAEAに提出し、同保障措置が発効することを要求する――など。

ブッシュ大統領は、「世界の核不拡散に向けた努力が強化され、環境保全や雇用の創出に貢献するだけでなく、インドが責任ある方法でエネルギー需要の増大に対処する一助となるだろう」と述べ、その意義を強調した。

C.ライス国務長官も、同協定によって世界の核不拡散体制強化に向けた努力が加速されると同時に、国際的な枠組みによる恩恵、それを維持・強化し守っていくという義務を分け合うための共通責任を強く反映したものだと指摘した。


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