[原子力産業新聞] 2008年10月9日 第2448号 <4面>

温泉から希少金属回収 原子力機構など、高性能捕集布開発

日本原子力研究開発機構の高崎量子応用研究所はこのほど、地元企業との共同事業で開発した金属捕集布を利用し、群馬県内の草津温泉から、希少金属のスカンジウム(Sc)回収に成功した。放射線グラフト重合技術により、耐高温・強酸性の高性能金属捕集布の開発により可能となったもの。Scは照明器具、燃料電池の材料として近年、注目されている。

原子力機構ではこれまでも、放射線グラフト重合で開発した捕集材を用い、海水中からバナジウム、ウラン等の希少金属の回収を実証してきた。草津温泉の温泉水一トン中には、Scが約17mg含まれるが、回収には、Scのみを選択的に分離・捕集でき、高温・強酸の温泉水に耐える金属捕集布が求められていた。そのため、同機構では、酸・アルカリに強いポリエチレン不織布基材に、Scと親和性の強いリン酸基を導入した金属捕集布を製作し、温泉水の流れ込む湯川で性能評価を実施したところ、連続的に95%以上の回収率でScを捕集可能なことが実証された。

装置のスケールアップにより、国内での年間使用推定量に匹敵する約200kgのSc捕集も可能となるものとみられている。

本成果は、経済産業省の「地域新生コンソーシアム研究開発事業」によるもので、温泉水の浮遊物を除去するフィルター開発等で、地元企業の技術が活かされている。


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