[原子力産業新聞] 2008年10月23日 第2450号 <6面> |
原子力学会 処分地問題で国際市民フォーラム 田嶋前東洋町長からのメッセージも日本原子力学会社会環境部会(部会長=諸葛宗男・東京大学公共政策大学院特任教授)と原子力に携わる女性のネットワーク「WIN―Japan」(会長=小川順子・日本原子力発電広報室調査役)は18日、東京・大手町のJAホールで、国際市民フォーラム「処分地問題の解決に向けて」を開催、放射性廃棄物処分に係わる諸外国の状況について報告を受け、ディスカッションを行った(=写真)。 海外の発表者は、M.パルム・フィンランドポシヴァ社主席顧問、イーエン・キム・韓国水力原子力発電放射性廃棄物エンジニアリング部アシスタントマネージャー、T.アイザック・米スタンフォード大学教授、C.フィレ・フランス原子力庁長寿命元素動向調査ユニット長で、各氏からの報告と合わせ、日本での処分地選定に向けた理解活動について、二口政信・原子力発電環境整備機構広報部長が説明した。 国内外の現状報告に続き、昨年、処分場誘致に応募したものの、民意を得られず応募取り下げとなった高知県東洋町の前町長・田嶋裕起氏に対し、先月、小川・WIN会長がインタビューを行った模様が上映された。その中で、田嶋氏は、応募に至ったきっかけとして、厳しい町の財政事情で、処分事業誘致に伴う交付金の魅力と、エネルギー政策への貢献と原子力平和利用の町作りを目指すという考えがあったことを述べた。また、住民の理解を得られなかった背景として、一般国民が処分地問題を知らないこと、反対勢力が風評被害をあおっている可能性をあげた上で、電話で疑問・不安に応えるシステム、風評被害を補償する基金創設などの必要を訴えた。 ディスカッションでは、若手女性地質学者のキム氏が、サイト選定にこぎ着けるまでの9年間に及ぶ努力を振り返り、国民の行政に対する信頼獲得に向け、コンセンサス作りに取り組んでいる韓国の状況を力説したほか、施設の安全性については、インターネット上のバナー広告で、自治体住民の安心感醸成に努めていることなどを強調した。「技術的安全を説明しても、一般の理解は得られないのでは」との会場からの質問に対し、フィレ氏は、ディベートなどを通じた対話活動の訓練の必要を指摘した。 コーディネーターを務めた宮崎緑・千葉商科大学教授は、リスクコミュニケーション論の立場から、(1)科学的に未解明(2)世代を越えるタイムスパン(3)不公平感――の感覚が、人々にリスクを強く感じさせると述べた。 |