[原子力産業新聞] 2008年10月30日 第2451号 <12面>

〈日本原子力文化振興財団最優秀理事長賞〉北海道札幌市立山鼻中学校・3年 濱みゆき 100%の「安全」と200%の「安心」

今年の7月、私の住む北海道で洞爺湖サミットが開かれた。世界の先進国8カ国だけでなく、中国・インドなどの近年急速な発展を遂げている新興国を含めた数多くの国々の首脳が一堂に集まった。北海道では、久々の国際的な大きなイベントだった。何故、北海道が開催地に選ばれたのか。それは、今回のサミットが「環境サミット」とも呼ばれるように、最重要課題が地球温暖化対策であったことと、北海道には他の地域にはない豊かな自然があるからで、それを全世界にアピールすることができるからだという。

ところが、その北海道に住んでいる私たち自身は、雄大な自然を当たり前のものとして受け止め、普段はほとんど意識していない。ましてや、地球温暖化といわれても、ピンとこないのが私を含めたほとんどの人の感覚だと思う。しかし最近は、ガソリンの値上がり、小麦粉をはじめとした食料品の値上がりなど、私たちの身近な生活にも変化が起こっている。

その原因は、中国などの新興国の成長に伴う原油の需要の拡大や、石油に代わる代替エネルギーとしてのバイオ燃料ブームによる食糧価格の高騰であり、二酸化炭素の増大による地球温暖化と不即不離の関係にある。このことは、地球温暖化と私たちの日常生活が密接に関わっていることに気づかさせてくれる。では、私たちは日常生活の中で、地球温暖化対策、二酸化炭素削減のために何ができるのだろうか。自動車をできるだけ使わなくする、電気の無駄遣いをやめる、ゴミをできるだけ出さないなど、できることはいくつかあるし、やらなければならないことだと思う。

しかし、私たちが今まで通りの便利な生活を続け、中国などの新興国や全世界の人たちも、私たちと同じような文化的な生活ができるようにするためには、今まで以上の電力量が必要となるのは明らかだ。今後の化石燃料の枯渇、バイオ燃料の普及による食糧危機の可能性、そして二酸化炭素削減などの問題を考慮すると、私たち地球人がサスティナブルに使い続けられるエネルギーは何なのか。そのひとつの答えが原子力だと、私は思う。原子力は二酸化炭素を出さない、クリーンでリサイクル可能なエネルギーなのだから。

だが、原子力というと、原爆、放射能汚染、健康被害などのイメージと結びついて、どうしても安全面での不信感を持っている人が多いと思う。専門家の話では、原子力事故に対する死の恐怖はほかの事故とは全く異質のもので、交通事故・喫煙・鉱山事故での死者人数を足した数は、1日だけでもチェルノブイリの死者の数千件分にも上るという。これは、原子力が社会から正しく理解されていないことを示している。

私も含めた一般市民にとっては、技術的な話を理解するのは難しい。そのため、難解な「安全」な話を、身近な「安心」と置き換えて、原子力技術を評価しているのではないか。そうすると、いくら「安全」な技術であっても、人々は100パーセント「安心」することができなくなる。もちろん、原子力技術は多くの研究者の努力によって、確実に進歩しているし、これからも進歩し続けると思う。今後私たちに課せられた課題は、原子力のことを正しく理解するように努めることだと思う。また、原子力の専門家の方々には、100パーセント「安全」な技術によって、地球環境保全とエネルギー確保のふたつの面で、200パーセントの「安心」を世界中の人々に与えてもらいたい。

先の洞爺湖サミットでは、2050年までに世界全体の温室効果ガスの排出量を半減させるための「とりわけ有益な手法」として原子力が位置づけられた。各先進国は発展途上国の原子力発電導入を積極的に支援しなければならない。世界で唯一の被爆国であり、原子力の平和利用技術の先進国である、日本の果たす役割と責任はとても大きいと思う。原子力を「安全」・「安心」な技術として利用し、私たちの地球を永遠に守り続けるために。


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