[原子力産業新聞] 2008年10月30日 第2451号 <9面>

原文振 原子力の日記念シンポ 原油高を巡り議論展開 エネ戦略どうあるべきか

「原子力の日」記念シンポジウム(主催=日本原子力文化振興財団)が23日、東京・有楽町朝日ホールで開催、昨今の原油価格高騰、地球温暖化問題をとらえ、「激動する世界情勢と日本の原子力利用」をテーマにディスカッションを行った(=写真)。

パネリストは、大橋弘忠・東京大学工学系研究科教授、作家・佐藤優氏、橋本五郎・読売新聞特別編集委員、日高義樹・米ハドソン研究所首席研究員。コーディネーターは、中林美恵子・跡見学園女子大学マネジメント学部准教授。

まず、原油高を巡る国内情勢について、橋本氏は、福田首相が6月に行ったスピーチ「低炭素社会・日本」を始め、最近、日本原子力研究開発機構が発表した「2100年ビジョン」などを、温暖化対策への弾みとして評価する一方、総合的なエネルギー戦略の中での原子力の位置付けが明確でないことを指摘した。これに対して大橋氏は、食料、医療、教育といった「目の前にあるエキサイティングな問題」と異なり、エネルギー問題は生活の中で希薄になりがちと危惧した。

一方、海外の状況について日高氏は、「『石油の時代は終わった』というのが米国の指導者らの基本認識」と明言した上で、2015〜30年、米エネルギー需要の30%、50%を原子力でまかなうために、新たな原子力発電所がそれぞれ45基、165基必要との識者の見解を紹介した。

ロシア情勢に詳しい佐藤氏は、エネルギー戦略の主力が石油から原子力にシフトしつつある同国の状況を述べた。

日本の原子力利用の行方については、核燃料サイクル推進、高レベル放射性廃棄物処分問題で、「地元の了解がネック」と大橋氏が述べたのに対し、橋本氏はマスメディアの役割に期待し、佐藤氏は、「ステレオタイプに考えず、反対する人たちの中にも入って」として、日本の知的水準の高さで解決が図られることを示唆した。また、日高氏は、日本の技術力に世界の注目が集まっていることを強調した。

本シンポジウムは、12月に柏崎市でも開催。


Copyright (C) 2008 JAPAN ATOMIC INDUSTRIAL FORUM, INC. All rights Reserved.