[原子力産業新聞] 2008年11月20日 第2454号 <2面>

気候変動国際シンポ開催 小池元環境相が原子力重視発言 日米民間対話委・原産協会主催

日米民間対話委員会(日本委員会座長=柳井俊二・元駐米大使)と原産協会は17日、東京・大手町の経団連ホールで「気候変動国際シンポジウム――エネルギー効率と革新的技術で目指す低炭素社会」を開催した(=写真)。内外から約300名が参加した。

シンポジウムの基調講演では小池百合子・元環境相が、京都議定書が発効した初年度にわが国のCO排出が90年比8.7%増となった主因は地震による原子力発電所の休止で全体の稼働率が60%台に落ちたためで、そうでなければ約5%も低減できた点を強調。その上で「原子力は温暖化対策のみならずエネルギー安全保障の強力な手段としてドイツ国内でさえ隠れた争点になっている。また最近ドバイを訪問したが、アブダビも含め石油枯渇後の国家戦略として低炭素社会構築を念頭に置き、この中に原子力導入も入っている。NPT体制のあり方など原子力をめぐる課題は山積しているが、地球防衛≠フためにもどう活用していくべきか」と、原子力の重要性に言及した。

また、「低炭素社会に向けた技術の活用――原子力・再生可能エネルギーの可能性」をテーマとしたセッションでは、インドのマスール・エネルギー資源研究所準理事が、10億人を超える人口を抱え2ケタの経済成長を加速、エネルギー需要が急増するインドの持続的発展の選択肢として「原子力と再生可能エネルギー」が2本柱で、原子力についてはすでに3段階の開発計画に着手、第3フェーズではFBR実用化も視野に入れている。ただ、技術力が不足、インフラも未整備でインド一国では実現できず、海外諸国との国際協力が必須要件だと強調した。

会場との質疑応答では、米欧の大学生の原子力に対する意識・取り組みや、教育方針についての質問があり、ユール米国商工会議所気候変動・技術担当副所長は「米国では産業界で原子力工学エンジニアの50%が退職する段階を迎える一方、大学生の半分は海外留学生で卒業すると母国に帰ってしまう。しかも、大卒の優秀なエンジニアは海軍に集中し、原子力産業界での技術者が極端に手薄になっていることが問題だ」と指摘。

また、ニールセン・デンマーク工科大学理事は「私の大学ではここ2、3年改善傾向にあるが、欧州でもこの10年間、理工系学生、技術者不足が定着している。もっと原子力の研究やビジネスにやりがいを実感できるようにすることが大事で、そうした目に見える成果やヒーローの出現が望まれる」とした上で、「過去に世界全体では年間30基超の原発を建設した実績もあるが、原子力先進国日本のメーカーは3社に過ぎず、ルネサンスに向けてメーカー数やインフラ整備上も問題が多い」と、欧州の認識の一端を紹介した。


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