[原子力産業新聞] 2008年11月20日 第2454号 <4面> |
放影協 放射線影響とリスコミで 医療従事者も交え議論放射線影響協会は12日、国立がんセンター(東京・中央区)で、講演会「放射線の健康影響とリスクコミュニケーション」を開催、被ばくによる健康影響リスクに対する理解について、医療従事者も交え、討論を行った(=写真)。 医療現場から、大野和子・京都医療科学大学医療科学部教授が、患者の放射線検査に対する不安が生じる時期、種類、内容について説明し、検査を施す上で、患者の真の不安を捉え、放射線診断の意義を認識してもらうようにしなければならないなどと述べた。 原子力事業者として、篠原邦彦・日本原子力研究開発機構核燃料サイクル工学研究所リスクコミュニケーション室長は、もんじゅ事故、アスファルト固化処理施設火災爆発事故、JCO臨界事故などにより失われた地域住民の信頼回復を目指したリスクコミュニケーション実践活動について紹介し、(1)少人数による直接対話(2)訓練されたコミュニケーター(3)現物主義(4)住民との協働――の効果が得られたとする一方、平時にはリスクコミュニケーションの明確な目的・目標などの設定が困難といった「平時の無関心」の課題をあげた。 リスクコミュニケーション論全般からみて、木下冨雄・国際高等研究所フェローは、「血が出る」などといった災害の具体的イメージが実感できず、晩発障害の恐れもある特徴などから、多くの一般市民が放射線に対し負のイメージを持っていることを指摘した。リスクコミュニケーションに携わる上でのポイントとして、社会・経済的な効用を主張する情報、公正さ・民主主義的な手続きを尊重する情報、市民の感情に配慮する情報を流しても、技術情報を省略すると効果が下がるという調査結果を示し、例え十分に理解されなくても、技術情報も必要不可欠なことなどを強調した。さらに、木下氏は、「ハト→かわいい→平和の象徴→安全」といった誤った論理で、動物による感染症のリスクに対して人々が気付かぬ例を示した上で、無知による安心感で、人々が危険にさらされることを避けるためにも、適切なリスクコミュニケーションが必要と述べた。 |