[原子力産業新聞] 2008年12月4日 第2456号 <3面>

欧州委員会 原子力安全規制 EU指令案を承認 EUレベルで域内の原子力安全確保へ

欧州連合(EU)の行政執行機関である欧州委員会(EC)は11月26日、加盟国における原子力発電所の安全性について規制枠組みの設定を提案する新たなEU指令案を承認した。

EU域内の原子力安全指令策定は、EU加盟国の一般市民が域内で稼働する原子力発電所の安全な操業を欧州全体で規制するよう求めている声に応えたもの。加盟各国の規制当局の役割を強化しつつ、原子力安全に関する基本的な義務事項や一般的な原則を規定する内容になっており、最終的に欧州理事会で採択されれば、共通の安全要求項目と枠組み基準がEUレベルの規制として加盟各国の原子力安全システムに組み込まれ、要請に応じてさらに厳格な規則を盛り込む権利も保持されることになる。

原子力発電所事故の影響が国境を越えるリスクは良く知られているが、これまでのところ加盟国間における安全基準の標準化レベルは限られている。指令案では各国による安全性の改善努力を一層支援していくため、EUレベルでの統一規則が盛り込まれる予定。一般的な観点からの目的は、原子力の安全性を達成、維持し、さらなる改善を図るとともに、これを域内で規制すること。一方、指令案は安全性の確保はあくまでも各国の責任であり、EUにおける補完性の原理は遵守される内容となっており、各国の安全規制機関の役割、およびそれらが職務を遂行する上での独立性強化をも目指すとしている。

適用範囲は原子力施設の設計から、立地、建設、操業、補修、および廃止措置に至るまでの全般で、それらの安全確保を規制上および法的な枠組みにより各国に義務付けることになる。当然、各国が原子力を利用する、あるいはエネルギー供給構造に加えない権利は全面的に尊重される内容だ。

EUにおける原子力安全指令案は2004年9月に最初に欧州理事会に上程されたが発効には至らなかった。ECは今回の提案では、「原子力の安全に関する条約」および国際原子力機関の安全原則に基づいて内容を修正したとしており、この分野の専門家である欧州原子力規制当局(ENSREG)の上級者グループが規制当局者との協力活動の中心的役割を担い、特に新規原子炉の安全性要求項目の改善に貢献することになると強調している。

ECの計画では2009年中にも指令案を発効させ、その後2年以内に加盟各国の国内法に適用させていとしている。


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