[原子力産業新聞] 2008年12月11日 第2457号 <3面>

仏・アレバ・グループ 英国市場にらみ 事業インフラ整備で2社と協定

フランスのアレバ・グループは4日、英国で今後20年間に建設される原子炉としてEPR(欧州加圧水型炉)を効率的に納入することを目指した産業行動計画を早急に策定し、これを実行に移すため、英国のロールス・ロイス社、およびロンドンに拠点を置く国際的なエンジニアリング・建設サービス・グループであるバルフォア・ビーティ社と産業パートナーシップ協定を結ぶことになったと発表した。最大で25GWとも予想される大規模な新規原子炉市場を前に、原子力ビジネスのための環境整備はいよいよ本格化の様相を呈してきた。

この行動計画の概要として、アレバ社は次のような点を挙げている。すなわち、(1)英国の2社とエンジニアリング、製造、および建設分野をカバーする協力で了解覚書(MOU)を締結する(2)英国への多数のEPR納入を実現するため、英国の産業景観や技術力および資源を英国の2社とともに確認し、必要であれば技術力向上プログラムを策定する(3)これらの取り組みが画期的な節目となり、EPR納入計画を確実なものとする重要な進展が1年以内に見られるはず−−などだ。

アレバ社はすでに今年4月、ドイツのE・ON社およびシーメンス社とも英国における160万kW級EPRの建設とさらなる原子力技術協力で同意書を締結。現在、E・ON社がアレバ社のEPR技術とシーメンス社のタービン発電機器技術により、英国に拠点を置いてEPRの立地を支援する共同スタッフ・チームの創設を進めており、英国で少なくとも2基のEPR建設を狙うとしている。

また、フランス電力(EDF)とのパートナーシップでは、EPRの包括的設計審査(GDA)手続きを実施。英国の特定のサイトにEPRの建設を申請する前に英国原子力規制当局による事前審査を受けるため、EPR設計の詳細情報を当局に提出済みとなっている。

アレバNP社のL.ウルセル社長によると、英国の新規原子炉計画は20〜25GWの規模に達すると見込まれるという。同社長は「だからこそ、英国におけるEPR計画実現のために適切な人材、技術、そして産業インフラが確保できるような産業景観を今、構築し始める必要があるのだ」と述べ、今回の提携の意義を強調した。

一方、バルフォア・ビーティ社は、英国のサイズウェルBやハンターストンおよびトーネス原子力発電所などの土木建築、機械・電気エンジニアリング、および建設工事に携わるなど、原子力関係の事業で過去50年間の実績がある。同社は早ければ2013年にも英国のサイトでEPRの建設を開始できると予測しており、アレバ社とともに効果的なサプライ・チェーンを整備できれば、今後25年間にわたって1万〜1万5000人分の雇用が維持されると見込んでいることを明らかにした。同社はまた、アレバ社との提携のほかに、フランスの建設会社であるVINCI建設とも50対50の比率で合弁企業を設立しており、英国でのEPR建設計画に対してプロジェクト管理や建設、土木エンジニアリング・インフラの面で支援が可能との見方を示している。

ロールス・ロイス社のG.ローウェ社長は、「アレバ社との提携は英国や世界各地における新規原子力計画の中で強力な地位を獲得するという当社の戦略の主要要素」とコメント。同社の原子力部門における能力の高さを改めて強調した。

なお、今回の産業界の動きについて、英国エネルギー・気候変動省(DECC)のM.オブライエン・エネルギー問題担当閣外相は、「わが国の製造・エンジニアリング部門にとって喜ばしいニュース」と評価。国内の大手2企業がアレバ・グループと提携することにより生み出される雇用の規模にも期待の意を表明した。


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