[原子力産業新聞] 2008年12月11日 第2457号 <4面>

理研 RI生成装置の中核技術 精密な核分光に成功

理化学研究所はこのほど、RIビームファクトリー計画で整備予定の基幹実験設備である超低速RIビーム生成装置(SLOWRI)の中核技術を開発し、世界で初めて高速の不安定原子核の精密レーザー核分光に成功した。

各種RIは、高速の原子核をターゲットに衝突させ発生させるが、発生したRIは高速飛行するため、低速RIだけで真価を発揮するレーザー核分光により、その質量や電気的・磁気的大きさなどを精密測定するにはRIの減速が必要になる。

SLOWRIはこれを実現する設備で、今回、その心臓部となる「高周波イオンガイド法」を開発、精密レーザー核分光に成功した。同法は、高速飛行するRIをヘリウムガス中で減速、室温まで冷却し、高周波電場で低速ビームとして取り出す技術で、理研は既存施設にプロトタイプを設置、開発を進めてきた。

実験では、光速の43%で飛行するベリリウムの不安定同位体を光速の1億分の1まで減速冷却し、レーザー分光を使用して超微細構造を相対精度200万分の1で測定することに成功した。

近年の加速器技術の発展により、従来の原子核モデルでは説明できない様々な現象が発見されているが、今回の技術は、これらも含む究極の原子核モデルの構築に大きな役割を果たすツールになるとしている。


Copyright (C) 2008 JAPAN ATOMIC INDUSTRIAL FORUM, INC. All rights Reserved.