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[原子力産業新聞] 2009年1月15日 第2461号 <2面>

【シリーズ】原子力発電「支えの主役 部品、機器、サービス企業編(3) フジキン 極限に挑戦「ものづくり大賞」総なめ 米国現地生産も視野に 日本の中小サプライチェーンを国際展開

フジキン(大阪市)は05年の第1回内閣総理大臣ものづくり日本大賞はじめ各種のものづくり大賞を総なめにするベンチャー型トップメーカー。原子力では小型計装バルブの雄でシェア90%を超し、宇宙ロケット用バルブ初の国産化、さらに半導体用超精密バルブ(国内シェア70%、世界45%)など各最先端産業の根幹を支えている。そして今、原子力グローバル化の流れを見据え米国での現地生産も視野に入れている。小川洋史社長にインタビュー、その強烈な個性、バイタリティー、リーダーシップの一端に触れた。

フジキンは1930年に配管機材、機械工具問屋として創業、来年で80周年を迎えるが、東大阪に新工場を建設して新しい自前の生産を開始した67年が真のメーカーに脱皮した第2創業年で、メーカーとしては後発。小川社長は「後発で市場に切り込み、抜きん出るには、新分野に挑戦し飛び抜けた技術力を示すよりない。そのシンボルが原子力と2、3年遅れで続いた宇宙ロケットであり、この両輪でフジキンの企業理念『常に極限に挑戦し、技術の究極を超える』具現化の出発点になった」と語る。

原子力国産化が国の施策として動き出したのは70年頃で、当時高圧ガス取締法の認定工場になっていたフジキンは小型計装用バルブメーカーとしてリストアップされ、電力各社が入れ替わり立ち替わり訪れ確性テストが繰り返された。「当時の工場現場の平均年齢は20歳代と業界でも圧倒的に若く労働争議とも無縁で、電力会社の指導の下、日夜兼行で応え、先方も辛抱強く待ってくれた。実機使用バルブの開発までに5年を要したが、この時の経験・実績が今に受け継がれ技術のフジキン≠フ原点になった」。

この間、単なる小型計装部分の落ち穂拾い≠クリアするためには、鋳造でなく鍛造でないと小型バルブは保たないことに気付き、さらに、素材も真ちゅうから当時はほとんど使われていなかったステンレスに切り替え差別化を図った。だが、小型ステンレス鍛造バルブの切削加工は極めて高度な職人の技を必要とした。「そうした技術を養成するには、東大阪という地域は実にぴったりのところで、機械加工は言うに及ばず、研磨、鍛造、素材、洗浄など自分のところに技術、設備がなくても周辺を一回りすればどこかが持っている。この地域の中小企業の『ものづくりの町』の素晴らしさを今も実感している」と、この地域の総合力・グループ各社との連携・協力が今日のフジキンの後ろ盾にあることを愛着と誇りを持って語る。

同時に、後発から抜きん出るためフジキンがこれまでに手掛けてきた原子力、ロケット、半導体、それに京セラと共同開発したセラミックバルブ等はいずれも特許製品。この積み重ねが04年の第1回「ものづくり部品大賞」受賞以降の5年連続受賞、05年には内閣総理大臣表彰の「ものづくり日本大賞」受賞など数々の快挙につながった。「バルブメーカーで毎年新製品を出すには、そういう会社作りをしてきたことの証明。今開発中の製品を順番に商品化できれば、ひょっとして今後10年ぐらい連続受賞できるのでは」と、次の目標を定め自信のほどを示す。

さて、フジキンは今後の原子力ビジネスをどう位置付け、グローバル化にどう取り組もうとしているのか。小川社長は「今後少なくとも30〜50年間は世界の経済・文明の維持に原子力は不可欠で、弱点はあってもそれを補って余りあると確信している。それには安全確保が大前提としてついて回ると思うが、むしろ条件が厳しくなればなるほど40年間の経験を持つフジキンの出番だ。したがって原子力ビジネスの国際展開にもわれわれは積極的に挑戦したい」と語り、米国、中国など海外進出を明言する。

「海外でフジキンの小型バルブの認知度は、品質管理要求レベルがより高度化している半導体で世界的に名が通りシェアももらっているので、米国で原発新規建設が再開されれば、当然、バルブでフジキンの名前が出てくるはず。われわれは米国機械学会(ASME)の認定資格を取り、米ユーザーのベンダーになれば中国はじめ世界に進出できる」と読んでいる。どういう形で米国での現地生産に乗り出すか、「いろいろ選択肢はあるが今年中には決めたい」との意向。

一方、すでに現地工場を持つベトナムでは新たに6万平方メートルの敷地をバクニン省の工業団地に購入、ここに、「フジキン共栄会」の100社とともに、東大阪の「ものづくり」拠点を移植し、日本のプラントメーカーのみならず現地小企業とドッキングし産業発展に寄与するとともに、今後のインド市場も視野に置く。


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