[原子力産業新聞] 2009年1月29日 第2463号 <4面> |
【シリーズ】原子力発電「支えの主役 部品、機器、サービス企業編(5)オルガノ 研究開発の黎明期から参入、国内水処理に自信 すでに米国市場には布石 軽水炉に不可欠の水処理 既設・新設問わず対応原子力発電所で電気を作るには、原子炉で作った熱を大量の水・蒸気が運び、その蒸気がタービンを回すからだ。基本的には火力発電所と同じだが、原子炉内を流れる水は、ただの水ではなく、医薬品製造などと同様に必要な“超純水”。不純物の量を砂糖に例えると、東京ドーム(124万立方m)に角砂糖1個が溶けたようなもの。機器の健全性確保や被ばく低減などから、飲料原料用の純水などと比べても1000分の1程度の少なさ、逆に電気抵抗率は蒸留水の100倍以上が求められる。 オルガノ(本社=東京都江東区)の前身は、戦後間もなく“無熱蒸留水製造装置”の開発・製造・販売をきっかけに日本オルガノ商会が1946年に諏訪市で創業されたところから始まる。戦前は、熱で水を蒸発させ、冷やして凝縮、蒸留水を作っていたものを、イオン交換樹脂を使って、熱を使わずポンプ動力のみで脱塩して純水製造が行えるようにした。 原子力との関係は、55年の旧日本原子力研究所の設立直後から社内研究会を発足させ、イオン交換技術の原子力工業分野への応用をはじめ、国の研究に関与すべく検討を進め、58年には旧原子燃料公社と共同でウラン抽出精製の研究を行っている。62年には旧原研から原子炉用水処理装置、プール水精製装置、炉心タンク水精製装置を受注、69年には原子力船「むつ」にも水処理装置一式を納入した。 原子力発電所への本格参入は、日本最初の軽水炉となる日本原子力発電会社の敦賀1号機(BWR、35万7000kW、主契約者=米国GE社)となるが、原子力発電所に本格進出するに当っては、社内でも激論があり、「技術的には自信はあるが、万一、何らかのミスを生じた場合、会社にとって致命的なイメージダウンになりかねない」という懸念もあったという。 それを当時の二宮社長以下経営陣が、「世界の最先端技術に挑戦し、原子力発電分野においても水処理のトップメーカーとしての地位を確立すべく、受注に踏み切った」と社史にはつづられている。結果、66年に原子炉補給水装置、復水脱塩装置、廃棄物処理装置、原子炉浄化設備など今日の同社事業の発展につながる装置を受注した。 以降、現在では国内の火力・原子力発電所向け水処理プラントのエンジニアリング会社として、同社の市場シェアは約70%で、特に原子炉浄化系の水処理プラントのシェアは90%に迫る割合を占める。 同社の「電力関連事業は急激な変化はない分野だが、国内は低成長。メンテナンスの仕事は継続的にあるが、今後が課題だ」と伊藤智章・執行役員電力事業部長は言う。復水ろ過装置や復水脱塩装置の中のフィルターやイオン交換樹脂は、定期検査ごとの交換ではなく、通常5〜10年はもつ。 今後の国際展開を見越して同社は、昨年11月、米国で高いシェアを有する水処理会社グレイバー・ウォーター・システムズ社ヘオルガノが開発・改良した技術を供与すべく、ライセンス契約を締結(=写真)、共同で市場開拓・展開していく選択を行った。実はグレイバー社は、オルガノが敦賀1号機の水処理関係装置を受注するとき、技術導入した会社。米国で原子力発電所の新規発注がなかった期間に、技術の逆転現象が生じたことになる。 同社では米国での火力・原子力発電所向け既設プラントへの水処理受注強化をめざし、4年前から社員を駐在させて、着々と準備を進めてきている。水処理プラントなどの新規受注時期は通例、原子力発電所の運転開始予定の5年前とすると、2010年ごろの受注を期待している。市場規模が細る中で、技術の維持・発展を図ってきた同社の努力が、どのように実を結ぶか。 |