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[原子力産業新聞] 2009年2月5日 第2464号 <2面>

【シリーズ】原子力発電「支えの主役 部品、機器、サービス企業編(6) 荏原製作所 一次系、二次系ポンプから海水循環ポンプまで 世界でも最大級 富津新工場建設に全力 米機械学会のNスタンプも

荏原製作所(本社=東京都大田区羽田)の矢後夏之助社長は今年の年頭の辞で、現在の金融危機が100年に一度の出来事と言われていることについて、「荏原自身、まもなく100年を迎えるわけだから、ゼロから事業を立ち上げるという気概をもって、逆風の中を突き進んでいくという意志を皆さんと共有したい」と強調した。

原子力を中心とした電力向けの需要は引き続き好調だとの見方は示しながらも、不況の中にいる今こそ、利益を出せる企業体質に変えていきたい、との姿勢を示した。

同社ではいま、原子力用ポンプなど大型ポンプ、高圧ポンプなどを製造する主力工場「富津新工場」(千葉県富津市)の建設に着手しており、2010年3月末の完成をめざす。09年度中より現在の羽田工場からの移転を開始し、完成後はポンプの生産設備としては世界でも有数の規模となる。

同社の創業者畠山一清氏は、恩師の東京帝国大学の井口博士の渦巻きポンプ理論による優れた製品を世に広めるため、「熱意と誠心誠意」をモットーに、1912年(大正元年)、「ゐのくち式機械事務所」を創業、20年には現在の荏原製作所が設立され、国産ポンプメーカーとして、国産第1号となる数々の製品群を世に送り出し、今日の同社の基礎が築かれた。

高い技術を要求される高圧ポンプの類は、長い歴史の中でその用途範囲を拡大してきたが、火力発電所用のボイラ給水ポンプの改良努力が特筆されるという。

火力発電所は70年台の初期まで大型化の一途をたどり、100万kW級でピークを迎えた。80年代以降、原子力発電の占める割合が増加するのに伴い、大型火力発電所はそれまでのベースロードから負荷調整用として利用されるようになり、ついには高頻度始動停止運用に切り替わった。

この運用により、ボイラ給水ポンプは部分流量での運転機会が頻繁になり、過酷な運用を強いられることになった。そのためベースロードでは問題にならなかった各種の振動問題などが顕在化したが、同社はこれらの問題をすばやく解決し克服、これによって同社は、プラントメーカや電力会社からの信頼を勝ち取った。

原子力発電についても、その発展は極めて急激なもので、日本原子力発電会社の東海発電所が60年代中期に、日本で初めて商業運転を開始して以来、ほぼ10年間に定格出力は110万kW級にまで達し、プラント容量では火力の100万kWを短期間で抜き去ってしまった。

同社では62年に、この東海発電所に原子炉給水ポンプを納入して以来、各種用途の高圧ポンプをその後の原子力発電所にも次々納入していった。

当時から同社は、米国のボルグワーナー社バイロンジャクソンポンプ部門(旧BJ社、現在は米フローサーブ社に吸収)と技術提携しており、76年の契約更新時には新たに原子力用の鍛造の外ケーシングをもつ二重胴ポンプを契約内容に含めた。その結果、79年に東京電力の福島第二1号機に国産初の二重胴単段給水ポンプを納入した。

その後、最大規模の原子力発電所はABWR時代に入り、同社は柏崎刈羽原子力発電所6号機の制御棒駆動ポンプ、ECCS系原子炉隔離時冷却系ポンプ、同7号機の原子炉給水ポンプと高圧ドレンポンプを東芝から受注した。

94年に納入したこの高圧ドレンポンプは、外胴外径が156cmでいまなお実績最大径の位置を譲っていない。

同社は長い事業経験から、BWRとPWRの両方の一次・二次系ポンプ、非常用冷却水ポンプ、海水循環ポンプなどの製造も可能なのが強み。ただ今後、受動的安全系強化をめざす新型軽水炉では稼働部分のポンプ等は減らす設計となっており、課題も。

今後の海外展開では、「国際的にも原子炉メーカには全方位の考え方で臨む」(小笠原保雄・常務執行役員)とし、すでに中国での100万kWPWR二次系ポンプの一部受注にも成功している。中国は国産化要求が強く、同方針への具体的な協力計画が入札評価の対象になっているが、現地工場であっても、合弁企業の資本について外国資本がどの程度なら認められるのか、定かでない部分があるとし、今後の不透明さを指摘する。

富津新工場では米国へのポンプ輸出を念頭に、米国機械学会(ASME)が認証するNスタンプも取得する方針だ。

国内では新規プラントの建設が少なくなり、ポンプ製造・メンテナンスともに技術者の確保と技術継承が問題になっている点は同社も同様。以前、高速増殖炉開発でのナトリウム冷却ポンプの開発、いまに至る技術者の確保などの苦い経験もあるが、「原子力ルネッサンスには期待しており、この市場はさらに拡大し、継続するものと考えている」(小笠原常務)。


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