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[原子力産業新聞] 2009年2月12日 第2465号 <2面>

【シリーズ】原子力発電「支えの主役 部品、機器、サービス企業編(7) 帝国電機製作所 自社の独自技術にこだわり 無漏洩液体移送ポンプ開発 キャンドモータポンプ 米国主力会社を03年買収 既存原子力に独占的供給

「キャンドモータポンプ」と言う耳慣れない特殊ポンプを主力製品として、多様な各種用途向けに国内だけでなく海外にも広く展開している。

帝国電機製作所(本社=兵庫県たつの市)は1939年、鉄道用信号機などの製造販売で大阪市北区に設立、44年には業務拡大と戦時疎開のため現在地に工場を建設した。

同社では戦後間もない47年に電気自動車の試作第1号を完成させており、「常に研究開発型企業として成長を続けてきた」(宮地國雄社長)との自負を持つ。60年には同社独自の「キャンドモータポンプ」の製品化に成功し、それが現在の同社発展の原動力になっている。

「キャンドモータポンプ」とは、電気モータとポンプが一体化し、外部との軸シール部を持たない輸送液無漏洩の特殊ポンプ。電気モータ稼働部のコイル巻線部を、英語のCAN=缶詰めの中に封入したような構造のため、同名がついた。

通常のポンプでは、ポンプ本体にモータシャフト貫通部があるため、液漏れがあるのは防ぎようがない。同ポンプにもモータシャフトの貫通部分はあるが、ポンプとモータが一体化されているため、機器外部には輸液は漏れないようになっている。

同ポンプで輸送するものは、液体の種類で約500種、濃度・温度・圧力で約100種、合わせて約5万種もの容態に対応する。例えば、水銀、硫酸や硝酸、フッ化水素、シアン化ナトリウム、ガソリン、超純水、液体放射性廃棄物など。

このため、有害、引火しやすい、腐食性のあるなどの危険な液体の輸送に適し、真空系の運転、外気に触れると変質する液の輸送にも適用できる。その上、小型軽量で設置場所をとらず、分解点検も容易、ポンプとモータの接続で芯だしも不要、モータを冷却するファンがないので運転音が静か、などの特徴を持っている。新幹線の変圧器冷却用などにも納入実績が多い。

「キャンドモータポンプ」での同社の世界シェアは37%で第1位、国内の原子力関連ではそれほど納入実績は多くはないが、液体放射性廃棄物の輸送関係、電力変圧器の冷却用などに納入している。モータの電磁石も製造していることから、大型放射光施設SPring−8に加速器用電磁石も納入した実績を持つ。

海外展開にも積極的で、米国と中国に100%子会社の製造工場を所有。特に米国ではいままでのほとんどの原子力発電所に同ポンプを独占納入してきた実績を持つ米国クレイン社の「ケミポンプ」事業部を2003年に同社子会社のTEIKOKU・USA社(本社=テキサス州ヒューストン)が買収している。メンテナンスのほか、今後、原子力発電所の新設が始まれば、一ユニット当り数十台の「キャンドモータポンプ」の出荷が見込まれる。ドイツ、台湾、シンガポール、韓国にも販売拠点を展開している。

同社では、顧客のあらゆる要求仕様に対応できる設計・生産体制を採っており、使用環境や使用条件などを顧客と十分相談した上で、納入している。同ポンプの自社開発だけでなく、製品検査に関する装置の開発なども自社開発を行っている。運転状態の監視にも、ポンプ外部から電気的に運転状態を監視できる装置テイコク・ロータリー・ガーディアン(TRG)を開発し、軸受けの磨耗や固形異物の噛み込みなども検知して、警報を発したり、ポンプを自動停止させることもできる。

同社が独自の技術で「キャンドモータポンプ」を開発できたのは、もともとポンプとモータの両方を開発してきたからで、いまもベテランから若手まで社内教育には力を入れている。

今後の市場としては、原子力発電所の建設も含めて、「特に米国、中国に大きく期待している」(尾上喜一郎・取締役総務本部長)としている。


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