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[原子力産業新聞] 2009年2月26日 第2467号 <2面>

【シリーズ】原子力発電「支えの主役 部品、機器、サービス企業編(9) IHI検査計測総合力の技術サービスを提供 特徴ある4事業部活かす SCCで高い技術力 模擬試験体も出荷伸ばす

原子力施設は様々な技術の集大成だが、株式会社IHI検査計測(IIC)は、総合エンジニアリング企業が培ってきた幅広い技術をベースに事業を展開する。「IHIの原子力事業と密接に協力するとともに、検査・計測・研究開発・システムの各事業部の総合力によって優れた技術サービスを提供する。今後もこの強みを十分に発揮させる」(井上明彦・取締役検査事業部長=写真)との方針に沿った施策を推進する。

同社は昨年7月に従来の石川島検査計測からIHI検査計測に社名変更した。発足は1974年にIHIのエネルギー・プラント事業の検査業務が独立した石川島検査サービスで、これが現在の検査事業部となる。77年にはIHI技術研究所の計測業務が独立し、現在の計測事業部となる石川島計測サービスも発足、両社は82年に合併して石川島検査計測となった。その後、システム事業部と研究開発事業部も設立した。

「IICは単機能の検査会社に止まらず、検査・計測・研究開発・システムの特徴ある4事業部から成り、検査・計測・解析・評価・研究開発・システム開発など原子力発電所をはじめとする大型プラントの総合技術サービス会社として、プラントのライフサイクル全般にわたり安全・安心に貢献する」(同)という。

4事業部の中で原子力分野と最も深い関係にあるのは検査事業部。様々な実機経験に裏付けされた検査機材や検査手法のノウハウを持つ。その中でも原子炉圧力容器および一次系配管溶接部の体積検査(UT=超音波探傷)は得意分野。「特にSCC(応力腐食割れ)の特定やき裂深さのサイジング検査については機材・手法・検査員の技量ともに高いレベル」(同)と強調する。

BWRの圧力容器の自動ISI(供用期間中検査)システムは、先駆者である米国の民間研究所のSwRI(サウスウエスト・リサーチ研究所)との相互技術協力とともに、IHIの協力も得て開発した独自の装置を原子力発電プラントに多数納入している。同システムの一部を構成するロボットも多くの開発実績を有するが、水中ロボット「AIRIS」では、99年にSwRIの非破壊検査業務を継承し、IHIとの合弁で設立したISwT(IHI・サウスウエスト・テクノロジーズ、テキサス州サンアントニオ市)に技術と機器を供与し、「AIRIS」を使用した検査工事を北米中心に展開している。「AIRIS」はすでに国内外で20台以上の納入実績を持つ。

同技術は英国のDBEL(ドゥーサン・バブコック・エナージー)社にも技術および機器を供与しており、欧州ではDBELによる事業展開を進めている。

検査員の技量、特にUT(超音波探傷試験)技術の向上にも力を入れており、「米国のEPRI(電力研究所)が実施するパフォーマンス・デモンストレーション(PD)認証制度に国内初の合格者を出し、その後も非常に難しいと言われる異材継手部認証も2名の合格者を出している。また日本のPD制度でも初年度の試験で合格者を出している」(同)。

一方、東芝のウェスチングハウス社の買収に伴い、今後、BWRとPWRの両方の建設に関与することになる。PWR対応ではIHIと協力し、SG伝熱管の渦流探傷試験を行うための技術習得や開発を進めている。

計測事業部は、(1)温度・ひずみ・振動・変位・三次元計測など計測一般を担当する計測技術部(2)種々の物質分析や環境計測を行う化学環境部(3)各種材料機械特性試験・残留応力計測・金相学試験・損傷調査・経年劣化調査などを行う材料試験部――がある。新設プラント時の施行条件の確立試験から建設、試運転、定常運転、定期検査、廃炉まで全ての状態における計測業務を行える体制を整備してきた。

「事業所主体の分析・計測会社ではなく、客先の様々な特殊な要望に応えて現地計測・調査サービスを実施していることが特徴で、検査装置も現地調査に対応できるよう、改造・改良を重ねてきている。今後もより高度な現地計測サービスを目指す」(中代雅士・計測事業部技師長)という。最近では、厚肉圧力容器で溶接部板厚方向の残留応力計測サービス、小型X線応力計測器や光ファイバー式ひずみ計測機器などの販売、計測サービスなども開始した。

研究開発事業部で主に原子力施設に関係する業務は、新しい溶接施行法の開発支援、同溶接試験体の健全性評価、実機に発生するSCCを模擬した試験体の製作、自動非破壊検査装置開発のための溶接欠陥を付与した試験体の製作など。今後は特にSCCを模擬した試験体や溶接欠陥を付与した試験体の製作業務に力を入れる。

SCC模擬試験体は、PDなど試験・研究機関向けに出荷実績を伸ばしている。国内最大級のオートクレーブを設置し、実機の原子力発電プラントで発生するSCCを非常に良く模擬した試験体を製作する技術を有する。「試験体は国のプロジェクトなどでも活用されている。海外ではSCCを“模擬”した試験片が多数出回っているが、実際のSCCの損傷を模擬できる設備や技術では世界トップレベル」(同)を自負。ニッケル基合金溶接部など異材継手部など、最近注目されている部分のSCC損傷の模擬体も多くの製作実績を有する。


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