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[原子力産業新聞] 2009年3月5日 第2468号 <3面>

【Fresh Power Persons (1)】IAEA原子力知識管理課 専門職 花光 圭子氏 日本人が国際貢献する姿見たいし、示したい

―国際原子力機関(IAEA)に籍を置いて4年目ですね。

花光 国際協力活動に情熱を燃やすうち、縁あってIAEAが原子力の平和利用と核兵器の削減に貢献した功績で2005年12月にノーベル平和賞を受賞した翌年1月から原子力エネルギー局に勤務、受賞祝賀会でIAEA職員とともに歓喜の余韻に浸った。また、07年には青森で主催したIAEA創立50周年記念シンポジウムにも参加、こうした歴史的節目を実感できたばかりか今、先進国のみならず途上国も含めた原子力発電グローバル化の加速でIAEAの重要性も一段と増し、4、5年前に比べて組織活動全体がものすごく盛り上がり多忙になった。

私の所属は原子力エネルギー局のニュークリア・ノレッジ・マネジメント(原子力知識管理)課。ANENT(アジア原子力技術教育ネットワーク)というアジア地域における原子力知識の伝承をインターネットによる教育や情報交換で強化するプロジェクトを担当している。通信教育の教材の開発やインターネットに乗せ教育支援するのが私の役割である。ANENTウェブサイト(www.anent−iaea.org) に、活動紹介やメンバーリストなどが掲載されている。登録メンバーは、データベースやEトレーニングにアクセスすることができる。

―よく日本は国際機関に「金は出すが、人は出さない」と言われるようだがどうか。

花光 IAEAの職員は種々の活動に参加している人の中から選ばれることが多いので、まずは活動の機会を増やすことが大事だ。特に、知識管理関係の会合はテーマがぼんやりとし、目的の具体性が乏しいため出席を見送られがちだ。今はまだ白紙だからこそ、欧米先進国と並んで、原子力先進国である日本のような国が入って、アドバイスや提案することが大事だと思う。何をやるか決まってから入るのでは遅い。

また、IAEAの支援事業の1つに「若者の国際原子力学会」ともいえるIYNC(インターナショナル・ユース・ニュークリア・コングレス)が2年おきに開催され、私は昨年9月にスイス大会を担当したが、欧米はじめアフリカ、南米、それに韓国からも15人ぐらいが参加、世界30か国、350人が集まったのに日本からの参加者はゼロ。今に始まったことではないが、こうした話題になると二言目には「日本人がいない!」と言われ、実に影が薄い。したがって、次回10年の南ア大会にはぜひ日本人を呼びたい。これは私の仕事の一部ながら、IAEAに働く日本人として果たすべき責務のひとつだと考えている。

―IAEA職員の任期は通常、最長でも7年だが、花光さんの役割は。

花光 私の個人的感覚で表現すると、在席1年目は、IAEAは「オリンピック」のように思えた。個人的知識・経験レベルは原子力先進国の方がはるかに上ながら、メンバー国平等の立場から各国から何人単位で参加しており、私も日本人女性だからここに来れたのかなと思いつつ楽しんだ。2年目になると事業予算が増えた分多忙を極め種々問題も起きる中、いやここは動物園≠セと思うようになった。いろいろな動物がわいわい議論するが、声が大きい方が有利な気がした。

そうしたさまざまな声を聞き考えているうちに、ある日ふと、ここは動物園≠ナはなく劇場≠セと思うに至った。世界各国から役者がそろい、一人ひとりに役割が与えられている。私も役者の一人として劇場全体を魅力あるものにするには日本人女性として生真面目に受け答えするだけでなく、もっと個性を出していいのではないか。

そこで最近は、日本にいれば不自然なくらい万事にオーバー・リアクションが身についてきた。そして私の役柄は、一人でも多くの若い日本人と一緒に国際舞台で活躍し世界に貢献する姿を見たいし、示したい。

(原子力ジャーナリスト中 英昌)(本シリーズは不定期で掲載します。)


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