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[原子力産業新聞] 2009年3月12日 第2469号 <3面>

ユッカマウンテン計画中止の可能性 DOEのチュー長官、上院委員会で示唆

米エネルギー省(DOE)のS.チュー長官は5日、上院・エネルギー・天然資源委員会の公聴会で、「オバマ政権はユッカマウンテンの高レベル放射性廃棄物(HLW)および使用済み燃料処分場の建設を選択肢としない」方針であることを改めて強調した。

この公聴会はエネルギー研究開発の将来の方向性を審査するとともに、その際の科学技術上の課題を特定するために開かれたもの。席上、大統領選でオバマ氏と争ったJ.マケイン議員(共和党・アリゾナ州選出)が、「オバマ大統領とあなたが断固としてユッカマウンテン計画を選択肢としない方針だと(メディアに伝えたと)いう話は本当か?」と質問したのに対し、チュー長官は「本当だ」と断言。マケイン議員が「では、原子力は将来のエネルギー供給に不可欠とする一方、全米の使用済み燃料を冷却プールに沈めて、再処理も貯蔵することもできないと原子力産業界に伝えることになるが、ユッカマウンテンの何がまずいのか?」と畳み掛けると、同長官は「原子力規制委員会が言っているように、廃棄物を固化して発電所サイト内に保管しておいても環境上のリスクはない」と答えた。同長官は、廃棄物を固化し中間貯蔵することが今我々にできることだとの見解を表明しており、中間貯蔵で時間を稼ぎ、その間に廃棄物処分のための包括的な計画を策定する考えであることを強調した。

続いてマケイン議員の「再処理する計画もあるか?」との問いには、「再処理の研究は支援する」と回答。「欧州諸国や日本がすでに安全かつ効率的な方法で実施しているのに、一体どのような研究が必要なのか?」との質問に対しては、「彼らの方法には核拡散のリスクが伴う」と述べている。同長官としては、リサイクルは使用済み燃料の容量を劇的に減じることが可能であり、長期的には非常に有益と考えているとした。しかし、リサイクル技術の開発には個人的に2、30年かかると見ており、時間的な尺度が違うとの認識を表明している。

チュー長官のこうした見解に対して、ユッカマウンテン計画支持派の上院議員達からは強い不満の声が上がっており、L.マコウスキー議員(共和党・アラスカ州選出)は同日、声明文を発表。オバマ政権は一貫して原子力を米国のエネルギー対策において不可欠と言い続けながら、ユッカマウンテン計画を停止させる判断を下したとして落胆の意を表明すると同時に、同政権に対して放射性廃棄物問題への実行可能な代替案を提示するよう強く促した。


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