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[原子力産業新聞] 2009年3月12日 第2469号 <3面>

モンゴルのウラン鉱業セミナー 鉱山開発で「日本の投資を希望」

独立行政法人の石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)が2日に東京都内で開催したセミナーで、モンゴルがウラン資源を活用した経済開発を希望するとともに、将来的には原子力発電の導入も視野に入れていることが明らかになった。

セミナーの主題は「モンゴル国のウラン鉱業」。同国で新設された原子力庁のS.エンフバト長官とG.マンライジャブ原子力・放射線規制局長が招かれ、同国ではウランのほかに銅や金、レアメタルなどの資源が豊富なため日本企業による投資を望んでいることや、「ウラン戦略資源物資法」を制定して、戦略資源としての特殊なアプローチを検討していることなどを紹介した。

同セミナーではまず、S.エンフバト原子力庁長官が約80名の聴衆を前に、「モンゴルのウラン資源」と題する講演を披露。それによると、同国では1981年にソ連と結んだ秘密協定に基づき、ドノルド県のマルダイ鉱山を皮切りに、ソ連が本格的なウラン調査を実施した。1989年から採掘されたウランはソ連のクラスノヤルスクに持ち去られているが、ソ連の探査チームが残した地図とデータによると、ドノルド県だけでもウランの確定鉱量は6万3000トン、可能鉱量は140万トン。現在は、フランスの企業もドノルド県で採鉱しているが、モンゴルとしては出来るだけ早急に正確な探査を実施し、埋蔵量を確定したい。探査結果によっては世界有数のウラン資源国になる可能性もある。

エンフバト長官の説明によると、モンゴルではすでに、首相を委員長とする原子力委員会が発足済みで、新たに設置された原子力庁の長官が副委員長を務めている。委員も関係省庁の大臣および専門家で構成されており、政府の政策決定について協議する場となっている。

原子力庁はその政策の実施機関であり、首相の直属という位置づけだ。職員数49名という体制で(1)原子力エネルギーの開発(2)監査・監視――を担当するとともに、傘下にはウラン監査委員会とウラン関連企業を擁し、探査・採掘・加工も実施している。今後は、4月に国会で原子力法案の審議を実施し、夏にも制定する予定である。

次に、G.マンライジャブ原子力・放射線規制局長が、「放射性鉱物と原子力エネルギーの利用に関するモンゴルの政策」について説明した。それによると、環境や資源活用の観点から、モンゴルでも放射性鉱物と原子力エネルギーの利用問題について討議した。原子力発電はまだ先の話となるが、国内のウラン資源量を政府のデータ・ベースに蓄積することを計画しており、最終的には濃縮して輸出することも検討中。モンゴルはIAEAの議定書にも署名しており、平和目的以外に利用しないことを明言しておきたい。ウラン探査においては人材育成も実施できる企業を希望。パートナーには、国際的な場でモンゴルへの支援を期待しており、採掘後の鉱山を元の環境に戻せる技術力と資金を持った企業を選定したいとしている。

その後の質疑応答では、モンゴルでも国の原子力利用を検討・実施するための人員増員や原子力技術研究所の構想が浮上したことが紹介された。実際の進展状況は予算不足等によりはかばかしくないが、小泉首相の来訪時に50人の原子力関係者の育成を約束してくれたことで、すでに5人が来日している。また、最近はロシア、中国からも人材育成の申し出があったことを紹介した。


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