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[原子力産業新聞] 2009年3月19日 第2470号 <4面>

原子力機構等 全原子構造を決定 HIVタンパク質分解酵素

日本原子力研究開発機構、大阪大学、京都薬科大学、創晶(大阪市中央区、安達宏昭社長)はこのほど共同で、中性子回折装置を使用し、エイズを引き起こすHIVが持つタンパク質分解酵素であるHIV―1プロテアーゼの全原子構造決定に世界で初めて成功した。より治療効果の高いエイズ治療薬の開発への貢献が期待される。

HIV―1プロテアーゼは、HIVの増殖に必須なタンパク質分解酵素で、同酵素の機能を抑制できればHIVの機能タンパク質が完成しないため、HIV自体の形成や増殖を抑えられる。これを抑制する治療薬の開発には、水素原子を含む同酵素の全原子構造の配置情報を明確に捉えることが不可欠だったが、観測が難しい水素原子の構造解析が大きな壁になっていた。

今回、共同開発グループは原子力機構の東海研究開発センターのJRR―3に設置した生体高分子用中性子回折装置「BIX―4」を使用し、同酵素とその機能を阻害するKNI―272の複合体結晶の全原子情報の決定に成功した。

同装置は検出器に中性子イメージングプレートを使用、効率的な単結晶中性子構造解析が可能。すでに同酵素の機能やこれを阻害する分子の働きに関し、多くの知見を得ているとしている。

KNI―272は京都薬科大学の木曽良明教授のグループが合成した分子で、同酵素に対して非常に高い親和性を持つ。


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