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[原子力産業新聞] 2009年3月26日 第2471号 <1面>

原子力白書 国際的潮流を分析 日本の役割強調も

原子力委員会は08年版の原子力白書をまとめ、3月24日の閣議に報告した。同委員会として原子力を巡る現状認識を示す第1章は、「国際社会での原子力への期待の高まりと我が国の役割」とし、国際的な潮流を分析するとともに、設備利用率の向上など我が国の原子力事業が抱える課題も示している。

第1章の国際的な潮流では、地球温暖化対策における原子力の有効性への国際的な共通認識の高まりを示した上で、世界各国での原子力利用拡大の状況を紹介、プルサーマルなど我が国の各原子力事業を概観した。

今後の課題は発電・核燃料サイクルの推進、基盤的活動の強化、国際対応の強化を挙げた。発電・サイクルの具体的事項は、(1)発電所の設備利用率の向上(2)六ヶ所再処理工場の操業段階への移行(3)高レベル廃棄物処分場の立地(4)次世代軽水炉の開発――。設備利用率では、国際的に遜色のない水準を目指すべきと指摘。短期的には柏崎刈羽の運転再開に向け必要な対策を講じ、各発電所の耐震安全性の確認作業を進めるとともに、新検査制度を有効に活用するために高経年化対策などの情報を共有し、より効率的な保守・保全活動を実現すべきとしている。処分場問題は、地方自治体が応募を検討できる環境の重要性を指摘した。

基盤的活動では研究開発の推進、人材育成、社会からの信頼の確保などを指摘。研究開発は原子力機構の予算減少、電気事業者の長期的視点に立った研究開発投資の低迷などを指摘し、この状況を放置すると、長期的に我が国全体の原子力活動の低下を招くことが懸念されるとした。

国際対応は3S確保を前提とした協力に向け、当面、地球温暖化対策としての有効性に関する認識の拡大、新規導入国への支援、原子力産業の国際展開、国際機関への貢献、我が国の国際協力戦略の構築などへの取組みを進めるべきとした。


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