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[原子力産業新聞] 2009年3月26日 第2471号 <3面>

米原子力協会が調査報告書 原子炉新設計画 「雇用と経済に寄与」

米原子力エネルギー協会(NEI)はこのほど、「米国における新規原子炉建設プロジェクトが良質な雇用の創出と経済成長を促す」と結論付ける調査報告を公表した。

それによると、原子力産業は短期的および長期的な雇用と経済効果の両方を生み出すなど、新たな職の創出と経済拡大を刺激するいかなるプログラムの中でも重要な役割を果たす。米国経済の中では比較的拡大傾向にあり、数少ない明るい材料の1つだとNEIは指摘。このことは、次のような一般的見解によって裏付けられるとしている。すなわち、(1)地球温暖化への取り組みは原子力のように低炭素技術を盛り込んだものでなくてはならない(2)米国には新たなベースロード電源が必要――だ。こうした理由から、新規原子炉建設計画に対する財政支援は、エネルギーのインフラ開発と雇用創出を刺激する総合的政策の中に含められるべきだとNEIは主張している。

70年代末以降、米国の電気事業者は初めて、新規原子炉の建設計画に着手しているが、これらはまだ初期段階で、着工までにはさらに3〜5年の時間が必要。それでも、新規の建設が見込まれるとの予想はすでに、原子力機器・サービス業者に相当規模の投資と新規雇用を促した。08年末現在のNEIの試算では、新規計画は2011年までの着工前段階で1万4000〜1万5000名もの雇用を創出。電気事業者はサイトの準備活動用に労働者を雇い、サプライチェーン企業は今後の需要増を見込んで、既存設備の増強や更新を始めている。

NEIの調査によると、仏アレバ社は08年に米国内の事業所で約350名を雇用、09年はこれに200〜250名を加える計画。ウェスチングハウス社は過去3年間で3000名を採用したのに続き、新規の建設工事需要に合わせて年間400〜500名ずつ増員していく見通しだ。これにより、過去数年間に原子力産業界がつぎ込んだ投資総額は40億ドルを超えたとNEIは指摘している。

また、新設計画の着工が2011年から12年にかけて現実的になってくるとの見通しの下、今後数年間にさらに80億ドルを投資する計画になっているとNEIは指摘。建設期間の雇用は、ピーク時で2400名分にのぼると推測している。

このような短期の雇用は、中期および2011年以降の長期にはさらなる雇用の急増につながるとNEIでは予測。十分な投資による刺激と財政支援により、雇用は今後5年間およびそれ以降でさらに拡大し続け、最初の8基で建設工事が始まる11年以降、2万名の直接雇用が見込まれる。また、仮に認可申請中の26基すべてが着工すれば、その数は6万2000名に達するなど、雇用は劇的に増加していくとの見方を示した。

2016年以降の運転期間に関しては、原子炉の耐用年数を60年として、1基あたり約700名分の正規雇用が見込まれるとNEIは試算。これら職員の勤務に伴い、学校施設や道路、小売商店といった地元インフラなどで、さらなる雇用も生まれると説明している。

一方NEIは、こうした投資刺激がなくなれば、近年の雇用創出ペースは次第に減速していき、大規模な雇用の可能性も将来的に完全に消えうせると警告。そうした雇用は、新規原子炉の機器製造や建設工事、発電所の操業など多様な職種にわたると指摘した。


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