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[原子力産業新聞] 2009年3月26日 第2471号 <4面>

【シリーズ】原子力発電「支えの主役」 部品、機器、サービス企業編(13) アスク・サンシンエンジニアリング 独自開発の放射線遮蔽材 豊富なラインナップが売り 消火活動にも対応する防護服 「ニュートロン・ファイアーファイター(R)」開発

保温、保冷、断熱、空調…。熱管理工事を幅広く手掛けるアスク・サンシンエンジニアリング。環境エンジニアリング事業の1つとして、同社は、放射線遮蔽材の研究にも、いち早く取り組んだ。γ線遮蔽材「ガンマー・ストップ」、中性子遮蔽材「ニュートロン・ストップ」、これらブランドを冠した独自開発の豊富な製品ラインナップ(=写真下)はこれまで、多くの原子力施設、放射線照射施設、輸送容器などに用いられてきた。さらに、新素材中性子遮蔽服「NEUTRON―TEX」や、原子力事故対応防護服「ニュートロン・ファイアーファイターR」(=写真上)など、原子力災害活動も見据えた製品開発にも関わっている。同社は、原子力分野では、プラントの保温工事も手掛けているのだが、今回は、主に放射線遮蔽材に焦点を当て、技術開発の経緯、今後の見通しなどについて、奥田久志・技術部次長に聞いた。

同社の放射線遮蔽材への参入は、1985年、東芝を通じて東京電力のプラントにシリコーン系のγ線遮蔽材をスペックインしたのに始まり、その後、中性子遮蔽材、ポリエチレン系遮蔽材も開発するようになったのだが、γ線遮蔽材では、東京電力福島第二、同柏崎刈羽、中部電力浜岡、東北電力女川の各原子力発電所には、相当量を納めてきた。しかし、98年頃から、原子力発電所の新設も減少し、開発部門も縮小、受注も「一時に比べて5分の1程度」という。しかし、「何かと問い合わせも来るのでやめるわけにはいかない」と、奥田次長は、各界から寄せられるニーズに応えるべく使命感を燃やす。

原子力発電以外では最近、中性子線遮蔽で、燃料電池実験用に特殊な部材の注文もあったという。「中性子を利用した構造解析を行うためでは」と、奥田次長は推測する。その他、このほど稼働したJ―PARCビームラインでの受注獲得もあげ、原子力機構などによる大型プロジェクトへの参画に今後の期待をかける。

放射線遮蔽関連で手掛けているのは施設だけではない。福井県内の消防設備会社との協力により開発した原子力事故対応防護服「ニュートロン・ファイアーファイターR」は、原子力災害発生時の屋内消火活動も想定した特殊スーツだ。放射性エアロゾルによる内部被ばくを防ぐ特殊表面加工・特殊デザインを施しているほか、炎天下での屋外活動や高温下での消火活動にも耐えられるよう、「体温維持ベスト」も装備されている。加えて、外部被ばく防止機能として、熱中性子線の90%以上を遮蔽吸収する「ニュートロンストップヘッドギア」(頭部)、「ニュートロンストップベスト」(胴体)により、感受性の強い器官を防護する。納品実績は、福井消防局、浜松消防局等、まだ十数着程度で、「なかなか実績が付かないと売り込みが進まない」と、奥田次長は難色を示す。

放射線遮蔽材に関して、「(原発建設ラッシュの)平成に入った頃、新規事業部を立ち上げようとした」と、およそ20年前を振り返る。病院、研究所などからの、小規模な受注はこれまでもあったし、今後もあるだろう。しかしながら、国内の原子力発電所建設が停滞する中、量子ビーム、防災、中国への進出など、より大きなビジネスチャンスを獲得すべく努めている同社の姿勢が今回の取材で強く感じられた。「小規模ながら続けていかないといけない」と奥田次長は言う。(本シリーズは今回で終了します)


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