「日本の強み」活かした国際貢献を

司会 では最後に服部理事長、毎月のように海外へ出かけ各国要人との生の意見交換を通じて感じとる、日本への期待と対応について聞きたい。

服部 原子力発電所の建設、新規導入にあたり、各国の日本への期待は非常に大きいものを感じる。日本の何かというと、ハードウエアあるいは機器の信頼性で、結局は日本がつくる高品質な「ものづくり力「に期待しているのだが、私はそれだけではだめで、最近よく指摘されるように、「ハードとソフトのパッケージ」とすることが肝心だと思う。原子力発電は、高品質の機器がそろえば動くという単純なものではないので、「相当な覚悟を持って、原子力とつき合って≠ュださい」と常々強調している。導入国の政治が安定していれば、発電プラントの建設そのものは5年程度で完成する。

ただし、原子炉の運転寿命だけでも、その十倍の50年、今では60〜80年と言われており、さらに、高レベル放射性廃棄物の対応まで含めると、それよりさらに一けた、二けた上の100年、千年オーダーでつき合っていくことになる。つまり、原子力発電を選択するには、それだけの覚悟と責任感を持つことが不可欠となる。

それだけに、日本のあり方も原子力の技術だけを切り出し、政府の支援のもとにメーカーが「こんないいものがありますよ」と、ただ売り込むだけではだめ。そうではなく、原子力先進国の中で唯一非核兵器保有国として再処理・核燃料サイクルも認められ原子力平和利用に徹し、国際原子力機関(IAEA) の保障措置の中で最も優秀な実績を残してきた「日本の強み「を生かし、ハードとのパッケージにしたい。

原子力発電所はプラントを建設して売れば終わりではなく、売った後のほうがもっと大事かつ息が長いので、そこに日本の長年にわたる経験・実績、ノウハウを伝え、国の発展に寄与するよう、日本がお手伝い・国際貢献し、それが日本のビジネス・国益にもつながるというWin‐Winの関係を築くビジョンをもつことが大切。人間が科学技術で生み出したエネルギー・原子力は、ある意味、人類の共有財産であり、それをいかに活用しサステイナブルな「低炭素社会」を実現し、地球を温暖化から救うか、世界の皆さんにぜひそういう視点を広く持ってもらいたいと願っている。

司会 本日は、大変多角的な視点からビジュアルかつ有意義な議論をありがとうございました。


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