フィンランド政府 既設 原子力対象に課税へ

フィンランド政府は1日、温室効果ガスの排出量取引に伴い電力会社が偶発的に得ている収益を削減するため、水力および原子力を対象に課税していくことになったと発表した。

これは3月31日に開催された内閣の経済政策委員会で決まったもので、CO排出割当ての販売により無料で得られた利益の相殺が目的。新たな税制は固定資産税と似た形式とし、国が徴収する。遅くとも2011年初頭からの適用を目指しており、財務省および雇用経済省が出来るだけ早急に税制整備の準備を開始するとしている。

風力や小規模の水力、および電熱併給システムなど、現在同国のエネルギー政策によって推進されている発電技術はこの税制から除外される一方、大規模の水力および原子力が対象となる。ただし、1997年の京都議定書採択以降に建設された、あるいは今後建設される設備は対象外となるほか、事業用電力および共同事業による発電電力も課税されることはない。税率を仮に1MWhあたり1〜10ユーロとした場合、税収入の総額は年間で3300万〜3億3000万ユーロにのぼると政府は試算。消費者が支払う電気料金には直接影響は及ばないとしている。

フィンランド政府の説明によると、欧州連合(EU)域内で2005年から適用が始まった排出量取引制度(EU−ETS)は電力市場に大きな影響を与えており、北欧諸国で発電コストに大きな変化がなかったにも関わらず、昨年の卸売り電力価格は急激に上昇した。北欧の電力市場においては、卸売り電力価格は最も発電コストの高い発電所の電力を基準に時間ごとに変化。このため、発電コストが低い上、COを排出しない水力と原子力は経済的に非常に有利であり、ETSはこれらの電源が主流である北欧の電力業界に数億ユーロもの利益をもたらしているとしている。

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フィンランド政府のこの発表に対して、同国でロビーサ原子力発電所を操業するフォータム社は、「これでは国内でエネルギー生産するより輸入した方がよほどメリットがある」と反発。この税制はすべて試算に基づいており、ほかの電源が政府の支援を受ける一方、水力と原子力という特定の発電形式にのみ課税されるなど「電力市場における競争原理をゆがめるものだ」と批判した。さらに、この税はエネルギーの生産に対して課されることになり、消費に基づいて課すべきとするEUのエネルギー指令に反すると指摘している。

同社のT.カーティネン上級副社長はまた、「ETSの概念は低炭素発電に対する直接投資を促すことが目的であり、排出コストはCOを排出した者が支払い、出さなかった者は利益を得るというメカニズムだ」と強調。原子力に特別に課税するということは、COを出さない発電技術を実質的に懲罰するものであり、この概念の足を引っ張ることになると訴えた。


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