第42回原産年次大会 環境相が出席、意義強調 原子力へ内外から期待感 次回大会 島根県松江市で開催

日本原子力産業協会は13日夜のレセプションを皮切りに、14日と15日、横浜市・みなとみらいのパシフィコ横浜で第42回原産年次大会を開催した。「低炭素社会実現への挑戦――原子力は期待に応えられるか」を基調テーマに、原子力先進国、新規導入を目指す途上国から多くの発表があり、活発な意見・情報交換が行われた。急遽参加した斉藤鉄夫環境相は、地球温暖化防止のためにCOを排出しない原子力発電がいかに貢献しているか、また、さらに今後、中長期の削減目標を達成するためには、稼働率の向上と新規プラント建設の着実な実現がいかに重要かを強調し、環境省としても原子力発電を抜きに実行ある削減対策を打ち出すことは極めて困難であることを指摘、原子力発電への期待を前面に打ち出したスピーチを行った。次回大会は来年4月20〜22日、松江市で開催する。

開会セッションでは、今井敬・原産協会会長が所信表明(=写真)を行い、石油文明から脱却を目指す「低炭素革命」の必要性を訴え、そのキーワードは「技術」にあると指摘。「電気自動車も、電気が必要だが、これを火力発電から取ってくるのでは、CO削減の観点で、あまり意味がない」と述べた。

同会長は、「待ったなしの地球温暖化問題への対応と、エネルギー安定供給確保という2つの大きな課題を同時に解決し、持続的発展の中核的な担い手となれるエネルギーは、原子力をおいて他にはない」と強調し、「原子力の重要性が世界の共通認識となり、その利用拡大に向けた大きな動きになっていくことを願ってやまない」と締めくくった。

次いで、開催地を代表して松沢成文・神奈川県知事と中田宏・横浜市長が挨拶し、共に環境を強く意識した行政を行っていることを強調。中田市長は、市民一人ひとりの努力とは別に、巨大都市のエネルギー確保も重要と指摘し、「原子力をはじめとして非化石エネルギーの多様性、ベストミックスを実現し、原子力の将来も含め、低炭素社会実現に向けた実のある大会にしてほしい」と挨拶した。

原子力をめぐる国際動向については、OECD原子力機関(NEA)のルイス・エチャバリ事務局長が「原子力エネルギー・アウトルック2008」と題して長期的な展望を総括した。

また、「世界の安全保障と原子力」と題して、カーネギー平和財団が取りまとめた報告書「原子力ルネッサンス」についてシャロン・スクワッソーニ同財団上級研究員が講演した。

午後からのセッション1「原子力大国・経済大国における低炭素社会実現にむけた原子力発電への期待」では、経済発展と低炭素社会両立の観点から原子力先進6か国がそれぞれの国々における原子力の役割をレビュー、共通課題について検証した。

2日目のセッション2「世界的な原子力利用拡大のなかでの日本への期待と役割」では、アジアや産油国を含む中東、南米をはじめとする新規に原子力導入を計画する国々より、核不拡散、安全性、セキュリティの確保の観点も合わせ、各国の原子力導入政策や、日本に対する期待感を聞いた上で、今後、どのような支援を行っていくべきかなどを考察した。

2日目午後の冒頭には、急遽、特別講演を行うことになった斉藤鉄夫・環境相が「低炭素社会実現への挑戦――原子力への期待」と題して講演、環境相として年次大会に初参加し、原子力関係者に直接、熱いメッセージを送った。

続くセッション3「低炭素社会における原子力の役割」では、河瀬一治・全原協会長(敦賀市長)が「地域の視点からの信頼醸成」、藤垣裕子・東京大学院総合文化研究科准教授が「科学技術と社会との信頼構築に向けた専門家の役割」について基調講演した後、パネル討論が行われた。

今回大会には、国内から約900名、海外30か国・地域から120名の計1020名が参加した。


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