【第42回原産年次大会】 開会セッション 基調テーマ「低炭素社会実現への挑戦──原子力は期待に応えられるか」 今井敬・原産協会会長 期待される日本産業 世界的利用拡大へ

ご承知の通り、昨年9月のリーマン・ショックを契機に、いま世界は100年に一度という未曾有の不況に襲われている。その対策の目玉として「グリーン・ニューディール」と呼ばれる環境にやさしいエネルギーへの投資が、大々的に行われようとしている。まさに、石油文明からの脱却を目指す「低炭素革命」である。

原子力発電は、発電時にはCOの排出がない。「技術」の固まりのような原子力発電を積極的に導入することが、「低炭素革命」を進める上で、現実的かつ最善の政策と思う。

今年は、12月にコペンハーゲンで開かれるCOP15において、「ポスト京都議定書」に向けた温室効果ガスの排出削減の枠組みを決める、たいへん重要な年にあたる。

脱炭素化を実現するためには、原子力発電の推進が欠かせない。ここ数年、世界的に原子力発電の役割が再評価され、新規建設や導入の動きが顕著になっている。

すでに原子力発電を導入している国は31の国と地域にのぼり、今後、新規に建設を検討・予定している国は20か国以上。まさに原子力ルネッサンスの到来といった様相だ。現在、世界で稼働している原子力発電所は約430基で、総発電量の16%を賄う。

将来、世界で増えていくエネルギー需要のなかで、原子力発電の比率を現状レベルに維持するためには、2030年頃までに数百基の原子力発電所を作っていかなければならない。

原子力発電の導入支援を必要とする国に対し、原子力先進国は、関連法の整備や人材育成などに積極的に協力することが大切だ。また、各国が連携協力して、原子力をクリーン開発メカニズム(CDM)に位置付けられるよう働きかけるとともに、将来のさらなる発展に向けて、燃料サイクル分野での研究開発を着実に進めるなど、あらゆる方策を講じて、原子力の利用拡大を図っていく必要がある。

わが国では、世界的な原子力開発の停滞期にあっても、これまでに原子力発電所の建設が途絶えたことはない。わが国の原子力産業は、建設実績を着実に積み重ね、高い技術力を蓄積してきた。こうした高い技術力を活かして、世界の原子力ルネッサンスの担い手として、貢献していきたいと考えている。

さて、原子力平和利用には、核不拡散の確保が大前提だ。原子力の平和利用が、これから長きにわたって定着できるかどうかは、核軍縮の進展にかかっているといっても、過言ではない。

世界同時不況という状況の中で、待ったなしの地球温暖化問題への対応と、価格の乱高下が繰り返されるエネルギーの安定供給確保という課題が、我々に突きつけられている。その2つの大きな課題を同時に解決し、持続的発展の中核的な担い手となれるエネルギーは、原子力をおいて他にはない。原子力の重要性が、世界の共通認識となり、原子力ルネッサンスを実現させ、さらに、その利用拡大に向けた大きな動きになっていくことを願ってやまない。


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