【第42回原産年次大会】 セッション2 基調テーマ「世界的な原子力利用拡大のなかでの日本への期待と役割」 アラブ首長国連邦 IAEA大使 ハマド・アルカービ氏 20年に電力需要3倍

アラブ首長国連邦(UAE)が原子力を評価しようとした動機としては、今後、急速な社会的・経済的成長が見込まれる中で、追加的な電源が喫緊に必要と考えられたからだ。

政府の調査・研究によると、20年までに国内電力需要は4100万kWと予測されており、これは何と現在の約3倍にも当たる。結果として、まず、天然ガスでは不十分、原油も技術的に現実性はあるものの、コストが高く環境保全面でも好ましくない。

石炭も競争力はあるが、原油以上に環境面で問題がある。再生可能エネルギーも、太陽光発電など、有望な技術はあるが、少量しかまかなうことができない。そこで、原子力が将来の確実なエネルギー供給源として無視できないという結論になる。

このほどUAE政府が策定した「原子力発電の導入評価および実施方針」でまず、求められているのは、一般公衆の信頼を得る「透明性」で、政府が決定したことについて一般市民が理解すること、本政策もその1つだ。そして、IAEAの支援も得て原子力開発の実施機関「UAE原子力公社」を確立していくこと、この機関が中心となって今後、評価を実施し、実行に移していくこととなる。さらに、国際的取り決めを結んでいく中でも、透明性を担保していき、一方、包括的な国内法を整備していく上でも、国際的取り決めの内容を盛り込んでいく。IAEA保障措置追加議定書へは先般、署名を行ったところだ。

技術的側面からは、第3世代の軽水炉を選択することで安全性を担保し、核不拡散も同時に達成する。また、主要プロジェクトでは既に成功してきた経緯があるのだが、原子力についても、官民がパートナーシップを結んで取り組める体制により、特に高い水準の安全、セキュリティ、核不拡散において、責任ある国との協力を民間企業レベルも含めて検討している。

原子力の導入で、数十年にわたる基本的な電力需要はまかなうことができると考えている。UAEでは既に、政策的枠組が進展を見せており、最近、まとめられたマスタースケジュールでは、17年までの運転開始を目指している。


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