IAEA 北京で閣僚級会合開催 事務局長が声明 「不況下でも原子力重要」

国際原子力機関(IAEA)は20日から22日までの3日間、経済協力開発機構・原子力機関(OECD/NEA)と協力して、「21世紀のための原子力発電」と題する閣僚級会合を北京で開催した。冒頭声明の中でM.エルバラダイ事務局長は、「世界的な経済不況がいくつかの国で原子力発電の拡大を鈍らせることがあったとしても、それは限定的な期間にとどまる」と指摘。中・長期的に原子力が世界のエネルギー供給構造の中で重要な役割を果たし続けることに変わりはないとの見解を表明している。

閣僚級会合の開催は2005年にパリで前回会合が開かれて以来、4年ぶりのこと。61か国・7国際機関から約800名の閣僚および政府高官らが参加し、原子力発電に関する技術開発の状況や将来見通しをレビューするとともに、原子力の導入を検討している国々に交流の場を提供した。

前回会合時に誰も想像しえなかった課題として、エルバラダイ事務局長は世界規模の経済不況を挙げ、各国の原子力開発計画に与える影響について様々な議論があることを認めた。その上で、「いくつかの国では確かに、期間限定で原子力開発計画の実施と拡大に遅延が生じることは考えられる」と指摘する一方、中長期的には世界各国で生活水準のさらなる向上を追及する結果、世界的にエネルギー需要が増え続けることは明白だと強調。「原子力は世界全体のエネルギー問題に対する特効薬というわけではないが、世界のエネルギー供給構造の中で重要な役割を果たし続けることに変わりはない」との認識を明らかにした。

事実、エネルギーの安定供給や環境上のメリットなど、原子力への関心を掻き立てる要因は複数存在し、すでに原子力を活用する30か国の多くが原子力設備の一層の増強を計画しているほか、これから導入を検討している60以上の国(その多くは途上国)がIAEAにその意志を通達してきていると説明した。

08年の世界の原子力発電開発について、同事務局長は80年代以降、稼動実績が非常に改善されてきた点を指摘。そのほか、「新規に運転を開始した原子炉が1基もなかったのは1955年以来初めてのことで、少々奇異な印象はある」としながらも、新規の着工計画が(IAEAの集計で)10件に達するなど、チェルノブイリ事故発生直前の1985年以来、過去最高となったことを強調した。

核不拡散関連では、数年前から自身が提唱している原子燃料および原子炉技術の多国間供給システム設立について触れ、ロシアによる低濃縮ウラン供給保証システムなど、いくつかの構想で進展があったことを評価。この件を6月の理事会に提案する考えを明らかにした。

また、IAEAの役割強化に関連して同事務局長は、近年IAEA予算がゼロ成長だったことから、加盟国に対して効果的に活動する能力の低下を懸念していたと表明。IAEAへの助言組織として自らが任命した独立の賢人委員会が昨年、2020年までに予算を倍増するよう勧告したほか、米国で発足したばかりのB.オバマ政権も、4年以内の予算倍増を提案するなど、明るい材料があることも紹介している。


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