J―PARC ニュートリノビーム生成開始 全実験施設が稼動へ

高エネルギー加速器研究機構と日本原子力研究開発機構は23日、茨城県東海村に建設した大強度陽子加速器施設J―PARCで、ニュートリノが同施設で初めて生み出された証拠となるミュー粒子の信号を確認した、と同日発表した。

ミュー粒子は、ニュートリノ実験施設のビームライン最下流部に設置されたミューオン・モニターで確認されたもので、陽子ビームが物質に当たり生み出されたパイ中間子が崩壊した結果、ニュートリノと共に生成される素粒子。

今後、J─PARCニュートリノ実験施設で発生させた世界最強度のニュートリノ・ビームを約295km離れた東京大学宇宙線研究所の神岡宇宙素粒子研究施設のニュートリノ観測装置「スーパーカミオカンデ」に向かって打ち出し、ニュートリノが飛行中に別の種類のニュートリノに変わる「ニュートリノ振動」という現象を調べる(=図)。

J―PARCニュートリノ実験施設は、高エネ機構が中心となって設計・建設したニュートリノ・ビーム生成施設で、高エネ機構の以前からある陽子加速器よりおよそ100倍の強度をもつビームを生成できる。次世代のニュートリノ研究を担う最先端の施設で、04年度から建設開始し、今年3月に実験設備が完成した。

また、J―PARCでは、加速した陽子を原子核標的に衝突させることにより、発生する中性子、ミュオン、中間子、ニュートリノなどの二次粒子を用いて、物質・生命科学、原子核・素粒子物理学などの最先端学術研究および産業利用を行う計画だ。

J―PARCでは、昨年12月の「物質・生命科学実験施設」稼動から、今回のニュートリノ施設の稼働により、すべての実験施設が稼働したことを受け、塩谷立・文部科学相は24日、「今後、本格的に施設が稼働し、原子核・素粒子物理学や物質・生命科学など、基礎研究分野から産業利用まで幅広い分野で、数多くの画期的な成果が挙げられ、世界的な研究拠点として発展していくことを期待」との談話を発表。


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