【新刊抄】「原子炉入門」 近畿大学原子力研究所教授 鶴田隆雄 著

日本の大学でも一時期、「原子力工学」の看板をはずし、より普遍的に社会や受験生から受け止められる学科名に変更した大学が多くあった。しかし、このところ世界的な「原子力ルネッサンス」の潮流を受けてか、再び原子力工学を真正面から受け止め、学ぶことを旗印として掲げた大学も現れてきた。原子力関係分野の卒業学生の原子力関連企業への就職割合も一時期は3割を切っていたものの、最近では再び3割を越えるような状態になってきた。

本書はそんな中で、これから原子力を学ぼうとする学生、技術者、そして原子力についてもう少し詳しく知りたいと思っている教員や市民(興味だけでなく、ある程度の理系の知識が必要か)などを対象に書かれたもの。著者が学生や院生にしてきた講義や実験のノートをまとめた内容となっている。

中性子の発見から原子炉の誕生まで、物理工学の偉人たちの業績を紹介。また、20億年前に地球上で「オクロ現象」と呼ばれる天然の原子炉が存在していたこと、太陽が核融合炉であることの解説。ここから先が数字や数式が入ってくるところだが、核分裂反応、中性子源、臨界、反応度などの記述。

原子炉の過去の事故例、原子炉等規制法、電気事業法の紹介、原子炉を使った実験内容なども解説している。

通商産業研究社発行、2100円(税別)、183頁。


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