文科省 人材、インフラ整備で議論 「最先端の研究炉を」など

文部科学省の原子力基盤強化作業部会(主査=田中知・東京大学教授)は21日、人材育成、研究開発インフラ整備・活用の現状と課題について、原産協会、原子力開発機構から説明を受け議論、委員からは最先端の研究炉を検討すべきなどとする意見もあった。

産業界から見た人材問題について、服部拓也・原産協会理事長は、国内では原子力発電の基幹電源としての円滑推進、世界規模では「原子力ルネッサンス」の流れを背景に、優秀な技術者・研究者の確保が求められる一方、設計・建設経験者の高齢化、技術の伝承を課題としてあげた。その上で、原子力技術者として(1)原子力の基礎知識(2)実験・実習を通じた現象の把握と分析能力(3)電気・機械・化学・土木・建築などの専門知識(4)基礎基盤分野の知識(材料・金属、構造力学、溶接他)(5)知識を有効に活用する汎用的能力――を有することを求めた。

原子力機構からは、小川徹・原子力基礎工学研究部門長が、「原子力大学連携ネットワーク」、連携大学院協定、国の原子力人材育成プログラムを通じた大学との連携協力の現状を紹介、今後の課題として、同機構内の熟練経験者の高齢化をあげたほか、大学側の制度に個々の研究者が協力する「一本釣り」の形にあることから、組織的な対応がとりづらいことを訴え、共同運営的な形に改善していく必要を述べた。また、小川氏は原子力機構が全国の研究拠点に有する17共用施設の大学・民間企業による利用状況を示したほか、産学との連携強化、社会のニーズに応える研究開発推進に向け06年に設置した「原子力エネルギー基盤連携センター」を拠点とするプラットフォーム機能などについて説明した。

これを受け、委員の山名元・京都大学原子炉実験所教授は、運営交付金が絞られる現状から、大学の施設が更新・維持されるよう国の予算措置を求めたほか、多目的に利用できる最先端の原子炉を検討する必要を述べたのに対し、小川氏は10年以内にも着手しなければ設計できる人材もいなくなると懸念した。


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