【Fresh Power Persons(6)】茨城工業高等専門学校3年 森脇 滉氏 電気学会「高校生懸賞論文」佳作受賞 原子力は「宗教」ではなく「教養」

―森脇さんは電気学会の平成20年度高校生懸賞論文コンテストで、「原子力(核燃料廃棄物量の推移から見る今後のエネルギー)」をテーマに佳作受賞したが、その応募動機を聞きたい。

森脇 私はエネルギー関係を勉強したいと思い茨城高専電気電子システム工学科に入学した。もともと、自分の頭で考え、抱いた疑問を自力で解明・確認したいとの思いが非常に強い。小学生のころは理科研究が好きで親の勧めもあり一人でこつこつと勉強、中学校では科学部で近くにある霞ヶ浦についていろいろ調べ、理学に関心を持つと同時に、研究・探究活動の面白さを知った。また、中学校の授業で日本のエネルギー利用グラフを用いて石油燃料と原子力との関係を聞かれた際、「日本はエネルギーのほとんどを輸入に頼っている…」というように答えたら、先生が「君はエネルギー関係を勉強していったらどうか」と大変ほめてくれたことがエネルギーに深く興味を持つ直接のきっかけとなった。

そして、高専でエネルギーの中でも特に原子力について集中的に勉強したのは、入学後すぐラジオ部に所属したことにある。ラジオ部というとマニア的アマチュア無線少年を連想するのは昔の話で、最近では無線には電源が必要なことからエネルギー全般がテリトリーに入ると拡大解釈、さらに、それを取り巻く環境問題まで取り込み、時代の最先端を勉強できる魅力をアピールしている。特に、茨城高専の周り半径10km以内に東海第二原子力発電所をはじめ約16の原子力関連施設が集中しているだけに、先生方も原子力教育に力を入れている。

電気学会の懸賞論文コンテストに核燃料廃棄物量をテーマに応募した動機は、廃棄物問題そのものに興味があったわけではない。ラジオ部ではこれまでに、高経年化を考慮した原子力発電所の設備容量の近未来予測や原子炉シミュレーターの運転実習等を行い、これらの活動を通じて実際に原子炉の中でどのような反応が起きているかを調べようとしたが、一般の説明書は難しすぎるか逆にあまりにも定性的で量の概念がなく、途中計算を省いた結論だけで、「信じる」、「信じない」しか対応できない「宗教」のような気がして納得がいかなかった。そこで、物理の教科書でウラン235の一原子が核分裂する際に約200MeVの熱エネルギーを出すことを知り、これを用いて核燃料廃棄物の量を自分で算出できると考え、詳しく調査し論文にまとめた。

―そうした自ら調査した上での感想、原子力への思いは。

森脇 今回の調査を通じて、いろいろな発電方法の長所・短所をしっかり理解したうえで今後のエネルギー源を考えるべきだと強く実感した。原子力については発電時のCO排出ゼロだけに注目するのではなく、廃棄物問題など未解決問題もある。また、今後も国の基幹電源を原子力に頼るのであれば、軽水炉での使用済み燃料をリサイクル利用するFBRサイクルは検討課題であるし、ただ、原子力以外の発電方法も考えるべきだろう。

私自身は、原子力が総発電電力量の約3分の1を占め今後もエネルギー問題全体を考える上で重要な手段の一つなので、「教養」として勉強しているという気持ちが強い。原子力に限定するようなこだわりはなく、自然エネルギーも含め多角的に見ていきたい。ただ、何事も情報をうのみにするのではなく、まず自分の頭に入れ反芻し、資料等で確認することが大切だと考え実践している。

また、原子力を勉強し、施設見学会等を通じて感じたことは、種々不備はあっても「電力会社のしていることを公的機関から見てどうなのか」をもっと言ってあげた方がいいのではないか。例えば中越沖地震で柏崎刈羽原発が原子炉の安全を守る基本機能は維持したのに、国や新潟県は問題をズルズル引っ張った感があった。むしろ損傷の少なさを評価してあげてもよかったかなとも思う。(原子力ジャーナリスト 中 英昌)


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