東大・市民講座 班目教授が総括 「多くのリーダー育成を」

東京大学のグローバルCOEプログラム「世界を先導する原子力教育研究イニシアティブ」が、昨年度行った「科学技術と社会安全の関係を考える市民講座2008」の概要報告を、同講座のコーディネーターを務めた班目春樹・東京大学工学系研究科教授がこのほど、原子力委員会に報告し、社会・市民との信頼醸成のあり方などについて議論した。

同講座は、一般市民を対象に、科学技術の諸課題や展望を広範な視点で捉え、社会安全との関係について理解を求めるのがねらい。原子力安全基盤機構主催の頃を含め、05年度から毎年、連続5〜6回、各回ごとにサブテーマを設定し、有識者によるパネル討論・質疑応答を行ってきた。

08年度は、「科学技術と規制」、「科学技術と報道」、「科学技術と組織信頼」、「科学技術と地域経済」、「科学技術と廃棄物処分」がテーマだった。

今回の市民講座を終えての所感として、班目教授は、(1)一般の人が安全性を十分理解すれば、受け入れてもらえるというのは幻想に過ぎない。皆忙しいし、理解しなければならない問題は無限にある(2)当事者を信頼できれば、内容を理解できなくても受け入れる(3)一般の人が議論したいのは安全性ではなく、決定のプロセスや制度のほうである。制度に関しては誰しもある程度の発言ができる(4)制度は決定済みで議論の対象外とするのでは、信頼されない(5)少数エリートのオピニオンリーダーだけでなく、多くのリーダーが育っている社会が健全な社会だ(6)リーダー育成の場として東大の市民講座も一定の役割を果たしている(7)対話集会は大切だが、効果を調べ改革する努力も重要――と指摘した。

参加者には原子力と関係ない職業の人も少なからずおり、毎回欠かさず遠方より出席する教育関係者もあった。

班目教授は興味深い点として、講義前後で、「科学技術と報道を考える」の回では、「問題があるのは、報道関係者側、原子力関係者側?」という参加者への問いに対し、「報道関係者側」という最多数回答のほかに、講義前に極めて少なかった「双方にある」という回答が講義後には増加していたことなどをあげた。


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