原子力総合シンポ2009開催 環境省・地球環境局長が「当面は原子力に期待」

日本学術会議・総合工学委員会は5月27日と28日の2日間にわたり、「原子力総合シンポジウム2009」(=写真)を開催した。原子力ルネッサンスといった明るい見通しが広まる一方、社会の変革期の中でもっと厳しく問題点およびその対応を示す必要があるとの考えから「原子力の将来展開〜変革期の社会の中で」を主調テーマとして掲げた。

1日目午前には、急遽欠席とはなったが斉藤鉄夫環境相の「原子力は地球温暖化防止の大きな柱」とのメッセージが会場に伝えられた。代理で寺田達志・地球環境局長が「低炭素社会の実現に向けて」と題して基調講演を行い、「2050年に温室効果ガス排出半減という目標は嘘偽りなく実行しなければならない」と述べ、「原子力発電所が停止していることはCO排出量に大きく影響する。当面のところ大きく変化を起こせるのは原子力であり、稼働率の向上、安全対策の徹底、安定操業の継続を通し、その期待に応えていくことを願う」と語った。

続いて近藤駿介・原子力委員会委員長が「わが国の原子力研究、開発および利用が当面する課題」と題して特別講演を行った。

同委員長は、近年の原子力動向をふまえ、次のような提案を行った。

@原子力関係者は、安全安定運転継続のためになお経験等に学ぶところがある。内外の経験および新しい科学的社会的知見を積極的に収集し、常に事業リスクの評価や管理を怠らないこと。

A研究開発で得られた知見や先行する世界各地の運転経験情報を体系的に管理し、高経年化した炉の合理的な予防保全プログラムを設計・推進していくこと。

B規制行政において「もの」の検証から「機能」の検証にパラダイム転換し、リスク感度の高い機能の品質確保に力点を置くこと。

C低炭素社会を実現し供給安定性にも優れる原子力発電の割合増加に力を合わせ、新・増設計画の着実な実行とその先の新たな新・増設計画策定にも取り組んでいくこと。

D将来的に次世代軽水炉の本命が漸進改良型軽水炉と革新的改良型軽水炉のどちらを選択していくか思案しつつ、軽水炉の改良を進めていくこと。

午後以降は「世界のエネルギー・原子力政策」、「我が国の原子力技術の中長期展開」などをテーマに各界から専門家が講演を行った。


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