原子力機構と電中研 海水U捕集で報告技術は進歩、課題はコスト

日本原子力研究開発機構と電力中央研究所は、2日の第20回原子力委員会定例会議で「海水ウランの捕集技術」について報告した。

両者によると、海水の中には77の元素が溶け込んでおり、ウランに関しても45億トンが海水中に存在する。これは鉱山ウランの約千倍に相当し、黒潮の運ぶ52万トン/年のうち、0.2%が回収できれば日本の年間需要量8000トン/年が得られることになる。

海水ウラン捕集の研究は、1960年代より含水酸化チタン捕集材を利用した方法を試みていたが、海水汲み上げ動力コストが問題となった。代わって80年代より、波力・潮力を利用し捕集性能を向上したアミドキシム捕集材(グラフト重合法)による捕集の研究が進められている。グラフト重合とは目的とする化学構造をポリエチレン等の基材に導入し捕集材を合成する方法で、放射線エネルギーで炭素と水素の結合を切断して活性点(ラジカル)が生じたところに反応試薬を加え、連鎖的に連なるウランの捕集機能を導入する。

アミドキシム捕集材による性能試験は、最初にむつ市関根浜で布状捕集材を使用して行い、1kgのウラン捕集に成功。次に沖縄でモール状(細かい独立気泡のフロートを内蔵した紐)捕集材を使用して試験を行い、軽量化によるコスト低減と水温による捕集効率を確認した。

現在モール状捕集システムのコスト評価は3万2000円/kg‐Uだが、今後、ウラン週間スポット価格の51ドル/ポンド‐U(1万3000円/kg‐U)を目標としてコストダウンをめざす。約90億円と見込まれる開発資金が確保できれば、5年の研究と2年の立ち上げ期間で実用化の見込み、だとした。また、初期投資には1000億円が必要としている。

他国の研究では、インドで捕集材開発例はあるものの海洋試験数が少なく、日本が世界をリードでき、実現すれば非資源国の日本にとっておおいに有益なものとなる。


お問い合わせは、情報・コミュニケーション部(03-6812-7103)まで