東芝のハイブリッド再処理開発 軽水炉高速炉 共存時代に柔軟対応

東芝は、軽水炉時代の長期化を踏まえ、高速炉と軽水炉が共存する時期に柔軟に対応できる「ハイブリッド再処理システム」(=概念図)の研究を進め、基本的な技術の見通しを得た。

六ヶ所再処理工場に採用されている湿式再処理技術と、工程がシンプルな乾式再処理技術のそれぞれよいところを組み合わせたもので、湿式の電解処理とアクアパイロを工程に入れているのが特徴。

湿式の再処理技術では、使用済み燃料を硝酸に溶解して、溶媒を使いウラン、プルトニウムを抽出する。東芝ではこれまでMA(マイナーアクチニド)核種を回収するためにアクアパイロを開発してきた。これに湿式の電解処理技術を組み合わせてウランとプルトニウムの分離工程に導入することで、工程をシンプルにすると同時に核拡散抵抗性を高めた。

常温で、硝酸溶液のなかにウラン、プルトニウム、MA、核分裂生成物(FP)が混在した状況で電解処理すると、まず軽水炉燃料用のウランが効率よく溶媒に抽出される。実験の結果、5回のプロセスを経ると99.9%以上の純度のウランを抽出できる。

それ以降、同じ処理で硝酸に抽出したMAとプルトニウムから、多少含まれるFPを取り除く工程を経て、高速炉用の燃料に使うプルトニウムをMAと一緒に抽出するため乾式再処理技術を使う。高純度のプルトニウムが単独で生じる工程がないため、核拡散抵抗性に優れる。また、MAを含んだプルトニウムは合金(固体)の状態で抽出することが比較的容易にできる技術なので、高速炉の導入の状況にあわせて合金の状態で保管する等、軽水炉と高速炉の共存時代に柔軟な対応がはかれるという技術的な特長があるという。

なお、高速炉燃料に使われるプルトニウムは、兵器転用を防ぐため、不純物を含む状態での再処理技術が湿式・乾式それぞれに研究されている。MAは、いわゆる高レベル放射性廃棄物に相当するが、高速中性子を使う高速炉の燃料として使えるため、一石二鳥ということでMA含有のプルトニウム燃料の再処理技術が研究開発の主流になっている。

1社のみでの開発というよりはオールジャパン体制での開発が今後必要になるとの考えから、東芝では国の公募研究制度を活用しながら、必要な試験等を続け、工学的な実現性を確認する考えだ。

第二再処理工場の建設については、2015年頃にはパイロット施設の概念設計段階に入るものと想定される。同社の研究開発の目標もその頃に照準を定め、概念設計段階での見通しを得たいとしている。


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