NEA次長 服部原産理事長と懇談 日本が新規参入国支援を

経済協力開発機構・原子力機関(OECD/NEA)のダン・リー総括次長が2日の午後、原産協会を訪問し、服部理事長、石塚常務理事と懇談した。

東京で3日から4日に開催された「第5回放射線防護システムの発展に関するアジア地域会議」に出席するため来日したもので、NEAの放射線防護・廃棄物管理部のリオッテ部長ら3名が同行した。懇談では、新興国の原子力発電参入に関連して、訓練、広報、安全基盤の整備等でどういう問題があり、どういう支援ができるかについて、意見交換した。

この中で服部理事長はまず、世界の中で日本だけが40年間以上、原子力発電所を継続して建設していることから、原発の建設プロジェクト管理では「日本モデル」とも言うべき手法が確立。この経験を新興国にも役立てたいとの考えを表明した。また原子力国際協力センター(JICC)の設立を含め、日本が途上国の要望にワン・ステップで応えられる官民一体の国際展開体制が整ったことを紹介した。

長年にわたり米国原子力規制委員会(NRC)で国際プログラム部長を務めた経歴を持つダン・リー次長は、人材育成や政権安定性等、新興国ごとの問題の違いを指摘。アラブ首長国連邦が国際枠組への参加や、基盤整備に真剣な努力をしていることを評価した。また、先進各国の原子力産業間での、国境を超えての、コンポーネント製造者、建設会社、燃料供給者、サイト調査会社間の調整がますます重要になるとの認識で一致した。

ダン・リー次長から、「多国間設計評価プログラム(MDEP)」の重要性が指摘され、服部理事長は、「MDEPのように産業界に密接に関わる会議には、産業界も積極的に参加すべき」との考えを表明した。同次長も、これを強く支持した。

服部理事長はまた、原子力ルネッサンスに潜む5つのリスクとして、@ファイナンスAプロジェクト管理(予算と納期・工期)Bサプライ・チェーン(必要時の必要部品の入手)C重要技能者育成D許認可発給の遅延――を指摘。特に、熟練専門家の引退問題への危惧を重ねて指摘した。

次に、米国での建設・運転一括許認可方式(COL)の進展状況についても意見を交換した。服部理事長は、「COLは新概念だから、どの時点でどういう審査をどの程度重点を置いて行うか等で、規制担当者の戸惑いが大きいのではないか?」との疑問を提示。同次長からは、「NRCがCOL方式をとったのは、規制の簡素化を狙ったつもりだったが、実際にはどの電力も、COL方式の最初の申請者になろうとはしなかった。むしろ、それまでやってきたサイトの安全審査と、機器の安全審査を分けてやる方式での安全審査を希望していた」との指摘があった。

服部理事長は、「申請者は互いに、様子見をしているように感じられる。COLの適用の仕方によっては、これからの審査の進め方の原型となるリスクもある。現状ではCOL方式の申請は、時間が3倍もかかっている感がある。これからは、そういったリスクの低減と、コストの圧縮が重要になる」との考えを述べた。

さらに、欧州のある原発での建設遅延に関するプロジェクト管理のあり方が話題になり、日本では電力が実質的に責任を負う形で調整を進めていることが服部理事長から紹介された。

このほか、NEAが昨年刊行した「原子力エネルギー・アウトルック2008」について、服部理事長は、「原子力発電に関するすべての情報が一冊にまとめられており、使いやすい。」との賛辞を述べた。同次長は、「4年ごとに改訂版を刊行したい」と語った。

最後にダン・リー次長から、NEA創立50周年記念のメダルが服部理事長に手渡された。服部理事長からは、日本の原子力産業の「時間どおり・予算どおり」の原子力発電所建設でのプロジェクト管理手法を紹介した英語版DVD「メイド・イン・ジャパン」を手渡した。


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