日立NDEセンター 非破壊検査で現場支える 検査員技量の向上の場に

原子力発電所の安全と信頼を支える機器を高精度に、また合理的に検査する技術の向上が求められている。

日立製作所および日立GEニュークリア・エナジー鰍ヘ、非破壊検査(NDE)技術の高度化と、専門の検査員の技量維持・技術力の向上をはかるため、同社の日立事業所に「NDEセンター」を設立し、効果をあげている。

同社センター内にはシュラウド(原子炉内に設置された仕切り板)支持部など、実物大の試験体が所狭しと並べられ、最先端の検査技術開発の現場適用性をみながらの開発が進められている。

現在開発している技術のなかで、微小なきずの深さを精度よく測定できるフェーズドアレイ方式の超音波探傷技術の開発は、これまでの原子力発電所でのトラブル等の教訓を踏まえ重要な開発課題。フェーズドアレイ超音波探傷技術は、超音波を送受信する多数の素子をセンサ内に配列し、超音波ビームを電子的に走査させる方式なので、検査精度が向上し、検査時間も短縮できるものと期待されている。日立グループでは、現場適用を向上させるため小型化と探傷性能向上の両立をはかった新型フェーズドアレイ超音波探傷装置を開発し、製品化している。

また原子炉内に設置されている機器も複雑な形状部分をもつため、最適なフェーズドアレイ探触子を開発している。例えば、シュラウド支持部溶接部などの曲面形状に適した探触子を開発、また炉底部の機器には多軸式のロボットアームなどと組み合わせて精度のよい非破壊検査が可能な技術を開発している。

さらに高機能化を目指して、検査速度と欠陥検出性の更なる向上を目的に、3次元フェーズドアレイ超音波探傷システム3D Focus―UTの開発を進めている。このシステムは、センサ内の素子を2次元マトリックス状に配置し、センサを固定した状態で超音波ビームを3次元走査することができ、さらに探傷データを3次元表示することで、探傷領域を一括して評価することが可能である。また同システムは、CADシステムの画像などと組合せ、微小なきずの評価精度を格段に向上させている。今後、現場ニーズに合わせて製品化し実用に供していく考えだ。

NDEセンターは、こうした先進の技術の開発とともに、専門の検査員の技量維持・向上の場でもある。

取材に訪れたこの日も、定期検査に派遣される前の検査員の訓練が行われており、真剣な面持ちで取り組む姿がみられた(=写真)。日々のたゆまぬ研鑽の場として、同センターは原子力発電所の現場と密接に連携し、現場を“守る眼と技術”の育成に力を発揮している。


お問い合わせは、情報・コミュニケーション部(03-6812-7103)まで