【シリーズ】原子力発電「支えの主役」コア技術編(5) 神戸製鋼所 大型鋼塊三次元異型鍛造 徹底した品質管理体制 「社内一貫」の工程が強み原材料から加工・最終検査に至るまでを「社内一貫」で行えるため、徹底した品質管理が可能となる。神戸製鋼所では、非常に幅広い事業領域を持つ同社の特長を最大限に活用し、中長期にわたって成長が見込まれる原子力分野を重点の1つに位置付け、グループの総力を挙げて、その拡大を目指している。 神戸製鋼グループは、鉄鋼、アルミ・銅、溶接等の素材製品、産業機械、建設機械等、さらには各種プラント等、幅広い製品メニューと、それらを支える多様な技術をそろえており、原子力分野でも、様々な製品を世に送り出している。鋳鍛鋼事業の生産拠点である高砂製作所(兵庫)では、鍛造・熱処理・機械加工・最終検査まで、一貫した管理・生産体制を構築し、原子力製品に要求される厳しい品質管理に応えている。 鋳鍛鋼事業では、70年代中頃より原子炉向け鍛造製品を世界各地に納品してきたほか、90年代後半には、関西電力美浜発電所向けの製造実績もある。近年は旺盛な船舶部材の需要対応に注力したため、原子炉向け鍛造部品は03年春以来、製造されていない。 一方、原子炉や蒸気発生器などに使われる大型異形鍛造品の生産技術開発に際しては、(1)溶接線減少による安全性の向上、(2)メンテナンスのしやすさ等を目的に、フランジ部やノズル部を含めた一体成形が志向されており、過去の生産技術をそのまま適用することが困難となりつつある。このため同社では、これら課題に対応すべく、国の「戦略的原子力技術高度化推進事業」も活用しながら、鍛造設計工程の見直しなど、鋳鍛鋼事業部と技術開発本部とが一体となって技術開発に取り組んでいく考えだ。 同社の高砂製作所では、100トン溶解炉、1万3000トン水圧プレス(=写真)、大型熱処理設備、大型機械加工設備などを備えており、原子炉・蒸気発生器用大型鍛造部材を一貫して生産できる体制となっている。今後は、11年春を目処に、100トン溶解炉、1万3000トン水圧プレスの改修を実施するほか、1万トン油圧プレスを来夏にも新設し、技術開発の成果も活用しながら、安定した品質の大型鍛鋼品生産につなげていく考えだ。 一方、機械エンジニアリング部門でも、材料開発や加工技術など主に基盤技術に取り組む全社の神戸総合技術研究所(兵庫県神戸市)や、国内外のパートナーとも連携しつつ、原子力関連の機器・設備・プラントなどのオンリーワンビジネスを展開している。例えば、原子炉用機器には欠かせない鍛造材料とボロン含有材料および溶接等の製造技術を組み合わせ、使用済み燃料や放射性廃棄物の輸送容器(キャスク)の設計・製造がある。高砂製作所では、1981年に国内メーカーとしては初めて、原子力発電所から再処理施設等へ使用済み燃料を輸送するための鍛造材料製の大型金属キャスクの製造を開始した。これまでに国内外向けに約200基の出荷実績があるなど、同社はその種類と基数で筆頭のメーカーとなっている。 さらに、放射性廃棄物の処理・処分分野でも数多くの実績を有しており、日本原子力研究開発機構の東海再処理工場では、低レベル放射性廃棄物処理施設等の気体・液体・固体状の各種廃棄物の処理設備・プラントを建設したのに続き、ここで培ったシステム技術を応用し、日本原燃の六ヶ所再処理施設では、チャネルボックス等の放射性廃棄物の遠隔ハンドリングと処理・貯蔵システムを供給した。また、高レベル放射性廃棄物処分技術開発にも89年から参画しており、炭素鋼・チタン合金等のオーバーパック容器の材料評価に取り組んできている。 今後は、従来以上に耐久性に優れた原子炉機器の供給や廃炉解体金属の限定リサイクル等の分野を中心とした将来ビジョンを掲げ、さらなる国際的貢献を目指している。 神戸製鋼グループは、原子力関連ビジネスを、5年後を目処に現状の数倍の規模に拡大すべく取り組んでいる。今後の技術開発の成果、ここでは触れられなかったが、溶接材料、原子炉用燃料被覆管、復水器用チタン管などの設計・製造に表れる同社の徹底した品質管理体制については、またの機会に紹介したい。 (特別取材班) |
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